フォロワー6人が失踪、 オンラインカルト「コズミックインテリ大学」とは

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ミズーリ州セントルイス郊外の都市バークレーの警察は、子供2人を含む6人が失踪中だとして、一般からの情報提供を呼びかけた。これらの人々は、現在収監中のラッパーでカルトの指導者とされる、ラシャド・ジャマル(Rashad Jamal)の教えをフォローしていたという。

行方不明となっているのは、セントルイス在住のミケイラ・トンプソンさん(25)、従兄弟のマケイラ・ウィッカーソンさん(36)とその3歳になる娘マライヤ・ウィッカーソンちゃん、ワシントンD.Cのナアマン・ウィリアムズさん(30)、ミシシッピのゲリエル・ジャーマンさん(27)とその娘のアシュトン・ミッチェルちゃん(3)。地元メディアが警察の話として伝えたところでは、6人は昨年8月、セントルイス郡北部にある借家から姿を消した。家には8月に立ち退きに関する書類が送られていた。

バークレー警察は声明で「捜査の結果、これらの人々はスピリチュアルカルトの一員で、ラシャド・ジャマルという男の教えに従っていることが判明した」としたと説明。「ジャマルには、複数のソーシャルメディアのプラットフォームに数万人のフォロワーがいる。最近ジョージア州でさまざまな犯罪で有罪判決を受けており、長期の禁錮刑に服していることに留意すべきである」と警告した。

コズミックインテリジェンス大学とは

ジャマルは、Youtubeでフォロワー20万人のチャンネル「The University of Cosmic Intelligence(コズミックインテリジェンス大学)」を運営し、時に数時間を超えるライブ配信を行い、宇宙の本質、黒人とラテン系に内在する力、自分を狙う敵など、さまざまなテーマについて語るなどしている。自分を預言者や救世主、神などと呼ぶこともあるという。

FOXニュースによると、YouTube以外にTIkTokのフォロワーが19万人、Xが10万人、インスタグラムが9万人おり、人々はアバターであるといった考え、鳥は民間人を監視するために政府が飛ばしているドローン、アリゾナはアフリカの玄関口、ミシシッピ川は実際はナイル川などといった主張をシェアしていた。

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ホームページでは、「カーボン化された存在、つまり地球の黒人とラテン系の人々を啓発し、心を照らすことを目的としている」などと説明する一方で、月額制のライブレクチャーや、ネックレス、クリスタル、Tシャツ、自作のレコードを販売している。

失踪中の大人4人を含む信者らは、特定の神や女神に関連した別名を名乗るなどしているという。信者には、仕事を辞め、家族や友人と断絶するほか、電気や電話を絶ち、クレジットカードで生活するといった共通の行動が見られる。さらにソブリン・シチズンや一夫多妻制の考えを受け入れているという。

失踪したウィッカーソンさんの母親は地元TV局に対して、「彼女は普段はこんなことはせず、とても家族想いだった。みんなと断絶して、仕事も辞めて、持ち物をすべて置いていくなんて普通じゃない」と状況を語っている。

セント・ルイス・ポスト・ディスパッチによると、ジャマルはシカゴ生まれで、同紙の取材に、暴力と貧困に囲まれて育ったと話している。薬物中毒に苦しむ人々を見て、自分のメッセージを届けるために詩やラップを始め、2017年にレコード契約を目指してアトランタに移り住んだ。スタジオアルバムを2枚リリースしており、そのうちの一枚は、マルコムXがライフルを持ってカーテンの外を覗く有名な写真を模したジャケットを使用している。

2021年にジョージア州バロウ郡で、児童性的虐待などの罪などで起訴された後、有罪となり昨年8月に禁錮18年の刑を言い渡された。ただし、今も無罪を主張しており、子供の親権争いにおける嫉妬に起因するもので、有罪判決は「人種差別」によるとの考えを語っている。

失踪事件との関係は否定している。

先述の取材で、自身の活動を「形而上学から量子物理学、分子生物学、海洋生物学、地理学、黒人歴史、世界史にいたるまで、さまざまなテーマで意見を述べているだけ」とした上で、「だからといってカルトの指導者になるわけではない」と主張。失踪はテレビの報道で知ったとしつつ、6人とは面識がないと述べた。「電話をとって、レクチャーをする。ライブを行って、電話を切る。ライブ配信を誰が聞いているか知らないし、非常に多くの人々がいる」と語った。

現在は刑務所から電話を使ってレクチャーを配信しているという。キリストやキング牧師、マルコムXに言及しつつ、自分に罰を与えようとする人々がいるのは驚かないと述べ、「全能の神は真実を知っている」と語っている。