156名が証言。米女子体操の元医師、性的虐待で175年の禁固刑

897

24日、ミシガン州ランシング(Lansing)インガムカウンティー裁判所は、150人以上の少女や女性に対する性的虐待の罪で起訴された米国体操連盟(USA Gymnastics)の元チームドクター、ラリー・ナッサー(Larry Nassar)被告(54)に対し、40年から175年の禁錮刑を言い渡した。

156名の少女、女性が証言

7日間に及んだ裁判では、156名の被害者による証言が行われた。この裁判の様子は、連日各メディアでライブ配信され、ナッサー被告の卑劣な行為の数々が明らかとなった。

被害者の中には、米体操女子の五輪金メダリスト、アリー・レイズマン(Aly Raisman)さん、ジョーディン・ウィーバー(Jordyn Wieber)さん、シモーネ・バイルス(Simone Biles)さん、ガブリエル・ダグラス(Gabrielle Douglas)さん、マッケイラ・マロニー(McKayla Maroney)さんらの有名選手も含まれる。
また、10代前半の少女らや、性的虐待がきっかけでうつ病を発症し、自殺した選手の母親も証言を行った。

Advertisement

初めの告発者が、証言台の最後に

最後に証言台に立ったのは、ナッサー被告による被害を最初に告発したレイチェル・デンホランダー(Rachael Denhollander)さん(33)。

元体操選手で、現在弁護士とコーチを務めるデンホランダーさんは、2016年インディスター紙(The Indianapolis Star)に、ナッサー被告による性的虐待を実名で告発した。

24日の裁判では、ナッサー被告が当時15歳のデンホランダーさんに暴行したと証言。当時の体験がトラウマとなり、今でも自らの出産時の診察を受ける時に、フラッシュバックが起こるなど精神的な問題を抱えているという。

また、ナッサー被告からの被害報告がありながら、長年ナショナルチームの医師としてきた米国体操連盟とミシガン州立大学も、犯罪者であると非難した。

30分以上に及ぶ証言を終えたデンホランダーさんには、傍聴席から拍手が起こり、アクイリイナ裁判官は「あなたは、やり遂げました。私が今まで裁判所で見た中で最も勇敢な人物です。」と述べた。
裁判官は、今回の証言台に立った女性全員に対し、各々の証言の後、彼女たちの勇気をたたえる言葉をかけている。
デンホランダーさんは、「私にはどれほどの犠牲を伴おうとも、正しいことのために、立ち向かうしか選択肢はなかった。」と述べた。

インディスター紙にデンホランダーさんの告発記事が掲載された後、シドニー五輪の銅メダリスト、ジェイミー・ダンツスチャー(Jamie Dantzscher)さんや、新体操の国内チャンピオン、ジェシカ・ハワード(Jessica Howard)さんも15歳の頃から性的虐待を受けたと名乗りを上げた。同紙は、9月12日にナッサー被告による性的虐待の記事を初めて掲載した。

I Just Signed Your Death Warrant

アクイリナ裁判長は、ナッソー被告に刑を告げる前、米国内の犯罪被害状況を明らかにした。3件に2件の暴行は警察に通報されていないという。また、10人に1人の子供、7人に1人の少女、25人に1人の少年が18歳の誕生日を迎える前に性的虐待を受ける可能性がある。また、40万人の幼児が性的虐待に合う可能性があると警告した。
今回の証言台に立ったサバイバーのように、声に出して訴えることが、大きな力の一部分となるとして、性的被害の広がりを今すぐ止めましょう述べた。

ナッソー被告に対しては、裁判の途中でナッサー被告が裁判所に渡した6ページの手紙の一部を読み上げた。
手紙には、児童ポルノ事件で不当な扱いを受けたという不服や、自分が行っていたのは性的虐待ではなく治療だという主張、被害者がお金や名声を求めて告発しているなどと書かれており、自らの行為を正当化しようとしたことが明らかにされ、傍聴席からは驚きの声が上がった。

「私は、あなたに刑を告げることを、光栄であり特権であると思っています。なぜなら、あたたは、今後刑務所の外を歩く権利はありません。」とし、「私は、たった今、あなたの死刑執行書に署名しました(I Just Signed Your Death Warrant)。」と述べた。

最短の40年の禁固刑と、刑期後に生存していたり、保釈を認められたりした場合を鑑みて、その場合は、最長の175年に延長されるという。
ナッソー被告は、別件の児童ポルノ所持の罪で、連邦裁判所より禁錮60年を言い渡されている。

ナッソー被告は、全ての被害者の証言後に、裁判長から発言する機会を与えられ、あらかじめ用意した短い声明を読み上げた。
「起こった事に対して、どれほど悪いと思っているかを表現する言葉が見つからない。」とし、「残りの日々をあなたたちの言葉とともに過ごしていきます。」と謝罪の言葉を述べた。

刑を告げられ、法廷を後にするナッサー被告には、刑を最大限にすることを望んだ被害者らの座る傍聴席から拍手が起こった。