米体操五輪チーム元医師の裁判 金メダリストのアリーレイズマンも証言

米女子体操五輪チームの元チームドクター、ラリー・ナッサー(Larry Nassar)被告(54)は、140人以上の選手や少女らに性的暴行を加えたとして、罪に問われている。

16日から開かれている裁判では、リオ五輪の金メダリストのシモーネ・バイルズ(Simone Biles)選手も被害者の一人として今回新たに名乗り出るなど、約120名の被害者が証言を行っている。18日には、ロンドン五輪の銀メダリスト、マッケイラ・マロニー(McKayla Maroney)さんの証言が読み上げられ、19日には、2014年、2016年と2度のオリンピックに出場し、キャプテンを務めた金メダリスト、アリー・レイズマン(Aly Raisman)さん(23)が証言台に立った。

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証言者の様子は、facebookなどのライブ中継で連日配信されている。まだ10代にも満たない少女の時に暴行され、何が起こったのかさえ分からなかったという女性も多い。性的虐待によるうつ病などで23歳で命を経った女性の母親や、13歳の少女も証言台に立った。30年近く続けられた悪質な行為と、生々しい証言に、多くの人が衝撃を受けている。コメント欄には、証言者の勇気を讃えるとともに、元医師や医師が所属する大学、連盟への怒りを露わにするメッセージが投稿されている。

29年間、米国体操連盟(USA Gymnastics)で医師を務めた同被告は、昨年ミシガン州で開かれた裁判で、10件のわいせつ行為での有罪を認めているが、今回の証言で量刑等が決定する予定。ポルノ写真の所持により、すでに60年の禁固刑が確定しているが、USA TODAYによると、今回の裁判の後、少なくとも禁固25-40年、最長では終身刑が言い渡されるとみられている。

ゴールドメダリスト、アリー・レイズマンの証言

レイズマンさんは、当初証言台に立つ予定はなかったが、今回の女性たちの勇気ある証言を見て、私もここにいるべきだと決意したという。ナッサー被告に向かい、「あなたが長い間虐待を行ってきた私たち女性が、力を持ち、今はあなたには何もないことを分かっていますか。」と問い、「潮の流れは変わったのです。私たちは、ここで、声に出して発信することができるのです。私たちはもう逃げません。ラリー、今度はあなたが聞く番よ。あなたを療す道はもうない。性的虐待からのサバイバーの言葉は、耳に痛いでしょうが、私や他の大勢があなたに託した信頼と権力を、あなたは乱用したのですと。」と非難した。
ナッサー被告から受けた処置は、「不適切な接触のみで、肉体的、精神的、感情的な痛みを伴ったのみだった。彼は、私たちの情熱や夢を利用しただけなのです。」と述べた。

また、レイズマンさんは、米国体操連盟や、米オリンピック委員会(US Olympic Committee)は、ナッソー被告へのクレームを受けながら、何年も放置し、被害を拡大したこと件についても非難を述べた。最新の著書でも彼女が被告から受けた性的虐待についても綴られるという。

裁判のきっかけはIndyStar紙の調査報道

今回の性的被害が明るみになったのは、2016年、インディスター(IndyStar、インディアナスター)紙による調査報道だった。記事「Out of Balance」で、ナッサー被告やコーチなどによる性的被害の訴えを受けながら、隠避してきたと報道した。少なくとも368人の選手が性的暴行の被害を受けたとされている。

この報道を受け、レイチェル・デンホランダー(Rachael Denhollander)さんは、8月4日ナッサー被告から10年以上性的暴行を受けてきたと告発した。
カリフォルニア州の弁護士John Manly氏は、インディスターに対し、シドニー五輪の銅メダリスト、ジェイミー・ダンツスチャー(Jamie Dantzscher)さんの代理人となった旨を伝え、ナッサー被告への調査を怠ったとして米国体操連盟(USA Gymnastics)を訴える予定だと告げた。
その後、新体操の国内チャンピオン、ジェシカ・ハワード(Jessica Howard)さんも15歳の頃から性的虐待を受けたと名乗りを上げた。
ダンツスチャーさんが警察に被害届を出し、受理された後、インディスター紙は、9月12日にナッサー被告に関する性的虐待の記事を初めて掲載した。記事の中で、ダンツスチャーさんは初めて氏名を公表した。
記事に対して、ナッサー被告は、医療処置が誤解を生んだとして疑惑を否定した。その後、ミシガン州立大学は、ナッサー被告を解雇した。2016年9月25日、インディスター紙は16人以上の女性が被害届を提出したと報じた。

2016年11月22日、ナッサー被告は、幼児への性的虐待の罪で訴えられた後、12月16日は、パソコンなどに37,000以上の児童ポルノ写真を所持していたとして、連邦裁判所に起訴。禁固60年の罪を言い渡された。翌年の7月に被告は罪状を認めている。
2017年11月22日、ナッサー被告は、女性7人へのわいせつ行為で有罪を認め、その1週間後には3件に関して有罪を認めた。

2018年1月24日、ミシガン州ランシング(Lansing)インガムカウンティー裁判所は、150人以上の少女や女性に対する性的虐待の罪で起訴された米国体操連盟の元チームドクター、ナッサー被告(54)に対し、40年から175年の禁錮刑を言い渡した。

156名が証言。米女子体操の元医師、性的虐待で175年の禁固刑