FBIがキング牧師に送った「自殺そそのかす手紙」とは

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15日のマーティン・ルーサー・キング牧師の日を前に、ロバート・ケネディ・ジュニア氏が、キング牧師に対するFBIによる盗聴を承認した父親の判断は、正当だったと擁護した。

2024年大統領選に無所属として出馬しているケネディ氏は、1968年に暗殺されたロバート・F・ケネディ元司法長官の息子であり、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥にあたる。

ポリティコのインタビューで、ケネディ氏は、司法長官だったロバート・ケネディ氏とジョン・F・ケネディ大統領には、当時のFBI長官ジョン・エドガー・フーバー氏の決定を支持する正当な理由があったと主張。キング牧師を仲間に共産主義者を抱える危険分子とみなし、公民権運動と牧師を「破壊」しようとしたフーバー長官が、「彼らに、キングのチーフは共産主義者だと告げたからだ」と語った。

「父は、フーバーにキングに対する疑惑が正しいか間違っているかを証明するために盗聴する許可を与えた」と続け、当時の状況では「政治的に、そうしなければならなかったと思う」と語った。

フーバー氏のバイオグラフィー「G-Man」の著者ビバリー・ゲージによると、FBIは1961年、元共産党内部の関係者だったスタンリー・レヴィゾン氏がキング牧師に最も近い白人顧問で、ゴーストライターや資金集めを務めていたことを把握した。これを受け、翌年にケネディ司法長官がレヴィゾン氏に対する盗聴を承認すると同時に、ホワイトハウスがキング牧師に交友を断つよう警告した。

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しかし、キング牧師は交流を続け、南部の警官の人種差別的慣行をめぐってFBIに対する批判を開始する。両者の関係が悪化するなか、1963年のワシントン大行進の直後、FBIは監視活動をその他の関係者やキング牧師に拡大。キング牧師の家や事務所、バッグ、ホテルの部屋にまで盗聴器がしかけられた。

共産主義者の情報についてはほとんど得られるものがなかったが、監視活動の途上でキング牧師の婚外の性生活が明らかになる。FBIの記録を調査したデビッド・ギャロウ氏は2019年のエッセイで、キング牧師が売春婦からグループ内部の人物を含む少なくとも40人の女性と性的関係を持ち、仲間の説教者が女性を強姦する場面に居合わせ「笑ってアドバイスをした」こともあったと主張している。

FBIは当時、キング牧師の信用を傷つけようと情報をメディアに売り込んだが、当時は話題にすらならなかったという。その一方、1964年に公民権法が議会を通過し、キング牧師は史上最年少でノーベル平和賞を受賞する。

自殺そそのかす手紙

これがフーバー氏が中傷キャンペーンをエスカレートさせるきっかけとなり、同年11月18日の会見では、キング牧師を「国内で最も悪名高い嘘つき」と非難。その数日後、ウィリアム・サリバン副局長によって、キング牧師に自殺をそそのかす内容の手紙が作成された。

ゲージ氏が発見し、2014年にニューヨークタイムズに掲載された手紙は、匿名でありながら、黒人の同胞が作成したように書かれている。

「キングよ。自分の心に聞いてほしい。お前は完全なペテン師でわれわれ黒人全員に責任がある」と記され、「詐欺師」「邪悪」「不道徳」といった言葉が繰り返し登場する。さらに「お前の乱交はすべて記録されている」「お前はもうおしまいだ」と脅しの言葉や、「お前がするたった一つのことが残されている。自分でわかるだろう。それをするのに34日しかない」と、自殺をうながすような文言が記されている。

当時を知る友人によると、手紙を受け取ったキング牧師は対応を協議するために仲間を集めたが、FBIの仕業にすぎないということに誰もがすぐに同意したという。