米国に進出・起業に適したビザとは? その3「E1」ビザを専門解説

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さて、今回はE1についてお話ししたいと思います。

E1は、条約貿易家と呼ばれるもので、米国との間に特定の条約を結んだ国の国籍者にのみ適用されます。使われることはあまり多くありませんが、独特のメリットがありますのでぜひご一読いただければと存じます。

E1の特徴と要件

長所

E1は、L-1と異なり申請前にその会社や関連会社で働いていたという実績は必要ありませんし、米国外に関連ビジネスがなくても申請可能です。貿易の種類は幅広く認められておりサービス業でも可能です。そして、締約国と米国の間の貿易から得られる所得が「貿易家とその家族を養える最低限の額」があればよいとされています。また、更新期間の上限はありません。

貿易

まず、そのビジネスが国際貿易に従事していること。そしてその貿易量(≒貿易額)の50%以上が米国と締約国との間のものであることですが、残りの「貿易」は国内の取引でも良いとされています。つまり、取引の半分以上が締約国と米国の間で行わなければならないということです。例えば1,000万ドルのビジネスで年間1万回の取引があるとして、そのうち8000回の取引を米国内で行い2000回の取引(約200万ドルの額)を日本と米国との間でしている場合、貿易量的には大きくても50%ルールを満たすことはできません。

貿易は申請時にすでに存在していること。貿易の種類は様々で、銀行業、保険業、運輸業、旅行業、そして、I(メディアビザ)との関係で微妙ではありますがニュースの収集活動等のサービス業も認められています。

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相当量の貿易があること

相当量の貿易が継続的にかつ多数の取引によって行われなければなりません。貿易額も考慮の対象にはなりますが、貿易量、つまり取引の数の方に重点を置かれます。米国と締約国との貿易から得られる所得が貿易家とその家族を最低限養える程度の貿易があればよく、その貿易パターンを示せればスモールビジネスへの配慮がなされています。実は、E1の最大のメリットはスモールビジネスへの配慮ではないかと感じております。

国籍要件

E1の対象企業の半分以上を条約国の国籍者が所有していなければなりません。会社が米国の対象企業を所有している場合は、親会社の所有者の国籍まで遡ります。公開企業の場合は上場している場所を国籍国とみなします。そして、オーナー本人だけではなく、E1を申請する従業員も同じ国籍でなければなりません。一つの会社で認められる国籍は一つだけです。ジョイントベンチャーで二つの条約国籍者が50-50所有している場合にも、どちらかの条約国を選ばなければなりません。

大使館の審査と移民局の審査

L-1やH-1Bと異なり、E1の大使館での申請に移民局の事前審査は必要ありません。しかし、E1 は条約に基づくビザですので国務省が主管となります。したがって、移民局の判断を国務省の出先である大使館が尊重する必要はありません。つまり米国内でE1にステータス変更が移民局から認められても、大使館ではビザスタンプを却下されることがあり得るわけです。

大使館での手続

大使館でE1ビザのスタンプをもらうためには、まず会社登録という事前手続きが必要となります。初めの1人の申請と同時に会社登録の申請をするのですが、会社の設立証書などの基本文書、貿易がすでに存在する証拠、財務諸表などが求められます。会社登録の審査の期間は経験的に3週間から1年間と大きな幅がありますが、移民局の審査と異なりこれを速める方法はありません。大使館・領事館のその時の都合によりますが、おおむね半年を見積もることをお勧めいたします。

しかし、会社登録の審査期間の間、日本にいなければならないということはありませんので米国でスタートした事業を何らかのビザで運営しながら会社登録の知らせを待つことも可能です。会社登録をした後の更新手続きや2人目以降のE1の従業員の大使館・領事館での審査は、許可が下りる場合は1週間程度の見積もりです。したがって、2回目以降の審査は移民局で事前許可の必要なL-1やH-1Bに比べてスピーディーになります。

滞在許可の期間

E1のビザスタンプは最長5年まで認められています。しかし、米国での滞在許可は1回の入国で2年間と決められていますので注意が必要です。もっとも2年以内に米国外旅行をすれば次の入国のたびに2年間新たに滞在許可をもらえますので、実質5年間あると見積もっても良いでしょう。また、更新の上限はありません。

申請者の種類

申請者の種類には、投資家本人、重役・管理職、そして基幹従業員があります。基幹従業員であるためには、その会社に必要不可欠な技能を持つことが条件ですが、H-1Bと異なり、必ずしも学歴が要求されるわけではありません。

寺井眞美(米国NY州弁護士)