米国に進出・起業に適したビザとは? その1「L-1」ビザを専門解説

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一般に労働ビザは米国の雇用主がスポンサーすることが多いのですが、では自分で進出・起業する場合にはどんな選択肢があるでしょうか。今回から何回かに分けて米国進出・起業のためのビザについてお話ししたいと思います。

考えられるカテゴリーはたくさんありまして、L-1(企業内転勤)、E(条約を前提として与えられる貿易家、投資家)、International Entrepreneur Parole Program(国際起業家臨時入国プログラム)、EB-5(投資家のグリーンカード)、EB-1-3(多国籍企業の重役・管理職)などが代表的なものとして挙げられます。今回は日本(または米国外のどこの国でも)にビジネスの基盤がすでにある場合に使えるL-1についてお話ししたいと思います。

L-1(企業内転勤) の特徴や要件

滞在可能期間

L-1A (重役・管理職)カテゴリーの場合7年まで、L-1B(専門技能者)の場合は5年まで滞在することができます。米国の事業所が新規(1年未満)である場合、初めの申請では1年間しか滞在が認められません。そうでない場合は当初3年の滞在が認められます。その後は上限に達するまで2年ずつの更新が可能です。大使館でもらうLのビザスタンプは一般的に5年間で発行されますが、ビザスタンプの有効期間と実際に米国に滞在できる滞在可能期間は全く別物ですので移民局での更新にご注意ください。

L-1取得の手続き

まず、米国の移民局に請願書を提出して実質審査を受けます。移民局で許可されると大使館に通知が届きますので、大使館でビザスタンプを取得します。米国内にすでに何らかのビザステータスでいる場合には、米国を出国せずにそのままカテゴリー変更をすることも可能です。

要件

まず、米国外の関連するビジネスで申請前直近3年間のうち1年以上、重役・管理職、または専門技能者として働いていることです。以前は「米国入国前の直近の3年間」という解釈でしたが、トランプ政権時代に「申請前の直近3年間」と改められましたのでご注意ください。

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ポジションは、重役・管理職または専門技能者ですが、後者は特に学歴が要求されるわけではなく、例えばその会社の内部手続きに詳しいなどという技能でも認められます。ただし、移民局のL-1B専門技能者に対する審査はなかなか厳しいですので注意が必要です。そして、米国外の関連会社はL-1の期間中ビジネスを継続していなければなりません。

他方、米国外の関連会社と米国の事業所のビジネスが全く異なることも可能です。例えば日本のIT企業が米国でレストランを経営するというような場合でも使えます。賃金については特段の決まりはありませんがポジションにふさわしいそれなりの賃金を支払うことは必要かと思われます。

L-1の長所

まず、国籍要件のあるEビザと比較して、どの国籍の者でも要件を満たせばビザは発行されます。そして、民間企業だけではなく慈善団体でも要件を満たせば所得できます。また、移民局に$2,500の追加料金を支払えば15ビジネスデー以内に審査をしてもらえます。この移民局の許可がおりた後の大使館での手続きは面接から1週間程度ですので、申請期間のコントロールがある程度可能です。移民局の許可があれば大使館でビザが発行されないということはあまりありません。そして、移民局の審査で却下されても「ビザスタンプの却下」ではなく「請願書の却下」なのでESTAが使えなくなることはありません。なお、どのビザでも大使館で「ビザスタンプを却下」されるとESTAは使えなくなりますのでご注意ください。

加えて、L-1の配偶者(L-2)には雇用許可が与えられます。最近の規則の改正によりL-1の配偶者は入国と同時に雇用を開始してよいことになり、雇用許可書の申請・許可を待つ必要がなくなりました。この雇用許可はどんな雇用主・どんな仕事でも使えます。

なお、グリーンカードでEB-1-3 多国籍企業の重役・管理職というカテゴリーがありますが、ほぼL-1Aの要件と同じです。しかし、EB-1-3の申請は別にL-1からではなくても良いので例えば現在E2その他のビザであっても要件を満たしていれば許可されます。

L-1の短所

米国外の事業所を継続しなければならないので拠点をすっかり米国のみにする場合や米国でゼロから起業するには適していないでしょう。また、滞在期限の上限はHでの期間と併せて計算されますので、後に米国企業に転職を考えている場合にはH-1Bの滞在期限をL-1の滞在で短くしますのでご注意ください。

まとめ

L-1は、すでにビジネスの基盤を米国外に持っている場合には使い勝手の良いビザと言えるでしょう。しかし、米国外のビジネスが存続しなければなりませんし、滞在期間が上限に達したのちの計画を立てておくことが必要です。

寺井眞美(米国NY州弁護士)