イーロンマスク ツイッター
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テスラのイーロン・マスクCEOは8日、ツイッターに対して、4月に締結した総額440億ドル(約5兆7000億円)の買収合意を撤回すると通知した。これに対して、ツイッターのブレット・テイラー取締役会長は「マスク氏と合意した買収価格と条件で取引を完了することにコミットしている」と発表。法的措置を講じる計画を示した。

マスク氏は契約締結後の5月、突然買収計画を保留すると発表。ツイッターの偽アカウント数は5%未満とする公式発表は実態を反映していないと疑念を呈し、根拠が示されるまで取引を先に進めることはできないとした。市場関係者の間では当時、買収価格の引き下げなど、より有利な条件を得るための戦略とみる向きがあった。

CNBCによると、マスク氏の代理人は、証券取引委員会(FEC)に開示した文書で、ツイッターは「契約義務を遵守していない」と主張。マスク氏側が要求した事業に関連する情報を提供しなかったとしたほか、偽アカウントの割合に関して「実質的に不正確な表現」が含まれており、買収契約に違反したと指摘した。さらに、同社が最近行ったレイオフを挙げ、事業方針を変更する前にマスク氏の同意を得るとした合意に基づく義務に違反したとも主張している。

契約破棄はムリ?

訴訟になった場合、マスク氏の主張する偽アカウントの問題が、取引破棄の正当性を認める「Material Adverse Effect(重大な悪影響、MAE)」に相当するかが焦点の一つになるという。ただし、専門家からはマスク氏不利との指摘が上がっている。

ボストンカレッジ・ロースクールのブライアン・クィン准教授は以前、ビジネスインサイダーの取材に、ツイッター社が登録しているデラウェア州では、MAEの基準となるハードルが非常に高いと指摘。「一般的に、一旦契約を結んだら、政府の介入や買収の対抗企業がなく、契約締結から買収完了までにMAEに該当する出来事もない場合、契約どおり履行される」と説明した上で、マスク氏がMAEを主張しても「裁判で勝つのは非常に難しい」と考えを示した。

通常、買収を撤回できるMAEの対象事項は限定されている上、ツイッターの弁護士らはMAEに該当しないケースを厳密に定義しているという。

契約では買収案が流れた場合の違約金を10億ドルと定めているが、ツイッターに対して、一定条件のもと、マスク氏を裁判所に訴え、取引完了を執行する権利を与える「特定履行」条項が設けられているという。同社はすでにこれを行使する意向を示している。

再交渉の道は?

合意した当初のツイッター買収額は一株当たり54.20ドルだが、その後ツイッター株は37ドル前後に下落している。当初の合意どおりに契約を履行すればツイッターにとって断然有利だが、買収額を減額するなどの再交渉に応じることは、ツイッターにとっても最善の可能性があるという意見もある。

SECの元チーフエコノミストで、カーネギーメロン大学テッパー・スクール・オブ・ビジネスの金融経済学教授、チェスター・スパット氏は、「ツイッターは裁判で勝算が十分あると見るかもしれないが、不透明な状況に陥るのを避けたい側面もある」と指摘。「(法廷闘争の)コストを払うよりも、マスク氏の面目を立て、多少の妥協交渉に応じる選択肢もある」とした。

一方で、ニューヨークタイムズは、値下げを受け入れることで、ツイッターは株主からの訴訟にさらされる危険があると示唆。訴訟費用がかさむかもしれないが、当初の条件を失うほうが、状況が悪化するとしている。