ビーガン転向のNY有名レストラン、評論家が酷評

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料理評論家ピート・ウェルズ(Pete Wells)氏は28日、ニューヨークタイムズに掲載したレビューで、マンハッタンの有名レストラン「イレブン・マディソン・パーク」(Eleven Madison Park)の新メニューを酷評した。

辛辣な評価を受けたのはスターシェフ、ダニエル・ハム(Daniel Humm)氏が考案したビーガンメニュー。ウェルズ氏は、「ほとんど素材の味がしない」「肉の代わりに使用された野菜が気の毒」などと厳しい言葉を並べた。

今年6月、パンデミックが始まって以来15カ月ぶりに営業再開した同店は、メインダイニングルームのコース料理(コーヒーを除く)を、全て植物由来の素材に変更すると発表し、話題となった。
ハム氏は「現在の食糧システムが、多くの点で持続可能ではないことは、ますます明白になっている」と理由を説明していた。

現在提供中のメニューは、12品のコース料理が335ドル(約3.7万円)。価格は、肉や魚料理をふるまっていたパンデミック前と同程度だという。

ウェルズ氏は、土鍋でローストしたビーツ料理を「(家具用ワックスの)レモンプレッジのような味で、焼けてるマリファナのような香り」と表現。「繊細なフレーバーは、味が強すぎ、見えざる材料によってハイジャックされている」「一口食べると、植物王国の”不気味の谷”に入ったと気付かされる」など口を極めて批判した上、前のメニューに戻すことを提案した。

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ただし、一部の料理は気に入ったようで、昆布で味付けた「とんぶり」やデザート、カクテルについては良い評価を与えた。ヒマワリ油のバターで作られたパンは「全面的に成功している」と称賛している。

ウェルズ氏は、ビーガンメニューだけでなく、ハム氏の主張する「持続可能性」の実現性についても疑問を投げかけている。

同店はかつて、豚肉や卵、材料の一部をアップステートにある独立系の小規模農家から仕入れていたと指摘。もし他のレストランがハム氏の主張に従った場合、それらの農家は廃業に追い込まれ、その結果、開発事業者が郊外の土地を買い漁ることになると警告した。
ナショナルジオグラフィックの記事を引用し、都会よりも郊外の居住者の方が一人当たりの温室効果ガス排出量が多いと説明しつつ、気候変動対策の助けにもならないと示唆した。

さらにプライベートルームでは、肉メニューを提供し続けていることに言及し、金持ちは秘密の部屋で特別な扱いを受けている「マンハッタンのメタファー」だと皮肉で締めくくった。

ちなみにイレブン・マディソン・パークは、ニューヨークタイムズで最高の四つ星評価を獲得している。NBCニュースによると、タイムズはパンデミック中、評価を変更しない方針のため、四つ星は維持できるという。

なおウェルズ氏は、有名店にも容赦なくゼロ評価をつけるなど、辛口評論家として知られる。

2019年には、ブルックリンの老舗ステーキハウス「ピータールーガー」について、「勘定を済ませた後、騙し取られたという、揺るぎない感覚が残る」「ニューヨークのベストには程遠い」など厳しい評価を下し、二つ星からゼロ星へと格下げした。