【コラム】ライバル?大国化する中国は日本をどう思っているのか

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    台湾情勢で緊張が続くなか、日本の秋葉国家安全保障局長は8月17日、中国天津市で中国外交担当トップの楊潔篪(よう・けつち)氏と計7時間に渡って会談した。会談では、ペロシリスクによって高まる台湾を巡る緊張関係、中国による軍事演習など喫緊の懸念事項をはじめ、ロシアによるウクライナ侵攻や核・ミサイル開発を進める北朝鮮情勢などが議論され、日中間で重層的な意思疎通が重要との認識で一致し、建設的かつ安定的な関係を構築していく意思を共有した。

    今回の会談は中国側からの要請によって実現したという。しかし、8月4日に予定されていた日中外相会談が直前で中国側の要請で一方的に中止され、中国側は日本の尖閣諸島への領海侵入を毎日のように繰り返している。大国化する中国の対日姿勢では読めないことが多いが、今日、中国は日本をどのように思っているのだろうか。

    まず、はっきりさせたいのは、中国にとってのライバルはあくまでも米国のみであり、日本はライバルではない。既に中国指導部は大国としての自信を高めており、日本を競争相手とは認識していない。しかし、日本が米国とタッグを組むことを良く思っておらず、中国には日米を政治的、経済的に切り離したい狙いがある。中国にとって日本は重要な貿易相手国であり、必要以上に関係が悪化することで経済関係が冷え込むことは望んでいない。

    しかし、台湾は中国にとって絶対に譲ることのできない核心的利益であり、台湾有事を巡って日本が中国の気に食わない態度を取り続けるようなことがあれば、経済制裁など日本を政治的に揺さぶるため、あらゆる策を取ってくる可能性がある。日中関係の悪化を持ち望んでいるわけではないが、それが上手くいかない場合があればやむを得ないという思いも中国指導部は持っていることだろう。

    このような中国の意図は既に行動として表れている。今回の日中会談の要請のように、日本に対して歩み寄りを見せてくることもあれば尖閣諸島への領海侵入を続けるという、“関与と圧力”を巧みに組み合わせることで日本の対応を注視している。それによって日米の切り離しが進めば良いというのが中国指導部の思惑だろうが、それが上手くいかない場合、また台湾情勢のように中国の核心的利益に触れる問題で緊張が高まった場合などには、圧力の方を前面に出し日本へ対抗してくる。これが今中国が重視する対日姿勢だろう。

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    ■筆者 カテナチオ:世界情勢に詳しく、特に米中やロシア、インド太平洋や中東の外交安全保障に精通している。現在、学会や海外シンクタンクなどで幅広く活躍している。