カリフォルニア州知事 死刑執行の一時停止を発表

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カリフォルニア州のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事は13日、行政命令により死刑執行を一時停止すると発表した。

知事室の発表によると、同州には現在、全米最多の737人の死刑囚が服役しており、全囚人の刑執行の一時停止が認められる。
行政令には、同州の(死刑の)薬物注射手続きの取り消しと、サン・クエンティン州立刑務所(San Quentin State Prison)にある未使用の死刑執行室の即時閉鎖が含まれる。

ニューサム知事は今回の決断に関して、個人的信念であり道徳に関するものだと、KGOに語った。刑事司法制度における体系的な人種及び、経済的不平等が存在すると指摘する。

差別や納税者の負担を指摘

前日に知事室が発表した声明の中で、「精神障害者、黒人などの有色人種、費用がかかるため代理人を雇えない人々への差別にあたる。」述べ、「死刑は、抑止力としての価値や、公衆安全の利益を提供しなかった。」として、死刑制度は失敗だとした。
また「納税者の税金を何十億ドルも無駄にした。死刑は絶対であり、人為的過ちがあっても取り消しができない。」と維持コストの問題や、冤罪が起こった際の人権への配慮についても触れている。
知事室は、今回の行政令により、囚人が釈放されたり、刑期が変更になるわけではないと強調している。

NBCニュースによると、ニューサム知事は、カリフォルニア州の死刑囚が10人のうち6人が有色人種であることから不公平性を指摘している。またこれまでに5人の死刑囚の冤罪が明らかとなっている。
死刑囚監房の維持費には、1978年以来、50億ドル(約5500万円)の税金が投入された。

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FOXニュースによると、同州では、死刑執行の方法が憲法修正第8条に違反するとして、訴訟が提起されたため、2006年以来、死刑は執行されていない。1978年以来、死刑が執行されたのは13人となっている。

最近同州に提出された、合法的な薬物注射による死刑執行の手順に関して、裁判官は判決を下すとみなされていた。知事室は、この判決により再び死刑執行への道が開かれると見ており、今回の措置に踏み切ったと見られている。

今回の発表を前に、トランプ大統領はツイッターで「有権者を無視し、冷酷な737人の死刑執行を棚上げにした。」と非難した。

決定を受け、被害者の擁護者シャロン・セリット(Sharon Sellitto)さんは、「知事は加害者ではなく、被害者を気遣うべきだ。」として述べ、判断に失望したとABCニュースに語った

刑事司法の専門家は、ニューサム知事の決定は、法廷闘争に直面する可能性が高いと予想している。

ロサンゼルス郡地方検事副官協会(Association of Deputy District Attorneys)のプレジデントを務めるミシェル・ヘネシー(Michele Hanisee)氏は12日、声明で「有権者は継続的に死刑執行を支持している」と述べ、「彼らは2006年と2016年に、死刑制度廃止の住民投票で反対を投じている」として有権者の意思を奪うものだと知事の行政令を非難した。

カリフォルニア州最高裁判所は1972年、州の死刑法は、連邦法修正第8条の「残酷で異常な刑罰に該当する」として違憲判決を下している。
死刑に関する住民投票が行われる前年の1977年、州議員が死刑法を再制定した。