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NY市 新型コロナの臨時病院 患者79人に57億円

ニューヨーク市が、新型コロナウイルスの患者の急増に対応するために4月に開設した臨時病院が、十分に活用されないまま閉鎖されていたことがわかった。ニューヨークタイムズが報じた。

市は4月10日、クイーンズにあるビリー・ジーン・キング・ナショナルテニスセンターに、470病床の臨時病院を開設した。当時、治療施設の不足は危機的状況にあった。この前日、4マイル離れたクイーンズ・ホスピタル・センターの救急部門では、60人のキャパシティに対し、180人の患者がおり、ストレッチャーや廊下に横たわる状態となっていた。またクオモ州知事は連日、5月までに追加で5万床の確保が急務だとして、政府による支援を要請していた。

受け入れた患者はわずか79人

市の記録では、ビリー・ジーン・キングが、5月13日の閉鎖までに受け入れた患者は、わずか79人だった。

受け入れ数についてタイムズは、官僚主義や縄張り争い、コミュニケーションの失敗とともに、最大の障壁は、他の病院が患者が送らなかったことだと指摘している。

同紙によると、そもそも市は、衛生局が同施設のトリアージを信頼していないことを理由に、救急車がビリー・ジーン・キングに911連絡をすることを許可していなかった。またビリー・ジーン・キングでは独自の救急車を用意していたが、契約の関係上、他の病院からの患者の転院に使用することができなかったという。

受け入れの条件について、私立病院の医師らは同紙に、ビリー・ジーン・キングは公立病院の患者のためのもので、私立病院からの転院はできないと説明されたと語った。

一方、公立病院の複数の医師は、病院上層部が収益の関係から、転院させることを望んでいなかったと述べた。また一部の医師は、ビリー・ジーン・キングが受け入れる患者は、極度に軽い症状に限ると説明されたと語ったという。

市の広報担当者によると、受け入れ不可能と判断される25の症状があり、この中には急な発熱が含まれていたという。

結局、先のクイーンズ・ホスピタル・センターから転院した患者は、たったの3人だったいう。

費用は57億円

患者数79人に対し、ビリー・ジーンの臨時病院のために、市が費やした費用は、少なくとも5,200万ドル(57億円)に上るという。

同施設を請け負ったのは、トランプ氏の国境の壁の建設の一部にも関わっているSLSCO社で、契約では「中および高度の疾患の新型コロナ患者」のための470床の設置および運営にかかるすべての費用について、市が負担する内容となっていた。

同社は、ほとんどの医師を時給600ドル、時間外900ドルで採用していた。金額は通常のレートよりもはるかに高いものだという。また看護師や薬剤師、医師のアシスタントには時給250ドルを支払っていた。

あるナース・プラクティショナーは、1日2,000ドルを得たと述べ「われわれはみな罪悪感を感じていた。正直なところ恥ずかしいことだと思った」と語った。

記録によると、市は4月27日に、当初の契約を見直し、低・中程度の患者用の100床にかかる費用を負担するものと変更した。また施設は、ホームレスの人々の隔離場所として使用することとなり、一部の職員は他の病院に去っていったという。

同施設は5月13日に閉鎖された。

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