米感染症権威ファウチ博士 コロナ研究所リーク説に「オープン」な姿勢明確に

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米政府の首席医療顧問としてパンデミック初期から新型コロナ対策を率いたアンソニー・ファウチ博士(81)。来月の退任を前に日曜朝の報道番組に相次いで出演し、新型コロナウイルス発生源とされる中国の不透明性に言及した。

新型コロナウイルスの起源は、動物からヒトへの感染による自然発生説が有力視されているが、中国の研究所から流出したとする説も否定されるに至っていない。最近では研究所説は影を潜めていたが、先月末、米メディア「ヴァニティフェア」と「プロパブリカ」が合同で発表した調査報告書で、2019年の新型コロナ発生当初と同じ頃、武漢ウイルス研究所がある危機的状況に対応していた、と記されたことで、研究所説に再びスポットライトが当てられていた。

27日、NBCの報道番組「ミート・ザ・プレス」のインタビューで、司会のチャック・トッド氏から新型コロナの起源について聞かれたファウチ氏は、「人々は私を誤解しているが、私は(研究所説に)完全に心を開いている」と回答。研究所説を全面的に否定せず、場合によっては受け入れる可能性もあるとの立場を示した。

世界的に権威のあるウイルス学者らが動物を起源とする説を取り、有力な証拠を提示したことも認識しているとしたうえで、ファウチ氏は「確実に証明されたわけではない」と判断に慎重な姿勢を示した。

さらに、鳥インフルエンザやオリジナルのSARSを含む過去の中国政府の対応に言及。「隠すことなど何もなかったとしても、彼らは疑わしく、不透明な動きをする」と不信感を示した。

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ファウチ氏は同日放送のCBSの報道番組「フェイス・ザ・ネイション」にも出演し、「最初に感染した人々についてすべての詳細を知りたい」と、起源については情報が不十分と述べている。

中国のコロナ規制 理解できない

中国政府は「ゼロコロナ」規制を掲げ、徹底した外出制限を課すことで感染拡大を抑え込みたい狙いだが、先週末、長期化する封鎖に疲弊した市民が抗議行動に出ると、デモは急速に各都市に拡大。習近平国家主席の責任を問う声も上がるなど、統制が厳しい中国では極めて異例の事態になっている。

「ミート・ザ・プレス」のインタビューでファウチ氏は、大規模デモの要因となった中国当局のコロナ規制にも言及。「彼らのやり方はとてもとても厳しい。特定の目的のない封鎖は、厳しすぎる」「目的や結末が見えないロックダウンの長期化は、公衆衛生の観点から理解できない」と批判した。

ほかにも、同日の各局報道番組では中国当局のデモへの言及が相次いだ。現在、米政府で新型コロナ対策を率いるアシシ・ジャー博士も、ABCの報道番組「ディス・ウイーク」で中国当局のコロナ規制に異論を唱え、「ロックダウンとゼロコロナを持続させるのは非常に難しい」と述べた。

米上院の外交委員会に所属するクリス・マーフィー上院議員(民主党)はCNNの報道番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で、抗議デモによる習政権への影響に言及。「残念だが、こうした独裁者は権力を維持するための非常に洗練された方法を確立している」とし、市民の抗議が習主席の立場を脅かすものにはならないとの見方を示した。