トランプ氏 機密文書返さなかったワケとは?

53

ホワイトハウスから持ち出した機密文書の取り扱いをめぐって刑事訴追されたトランプ大統領。9日に公表された起訴状で、連邦検察当局は、トランプ氏は表向きは捜査に協力するふりをしながら、捜査を妨害し、返還の要求を拒んだとした。

検察によると、トランプ氏は、捜査当局の要求する資料について、自分の弁護士に保持していないと誤った説明をしたほか、捜査から隠すために、側近に保管場所を移動するよう指示した。さらに、要求された資料をすべて作成したと誤って主張する証明書を提出させた。

49ページにおよぶ起訴状には、37の罪状を裏付ける機密資料の種類や保管場所の詳細、関係者間のやりとりなどが示されたが、トランプ氏がなぜ資料の保持にこだわったのか、動機は確立されなかった。

自慢したかっただけ?

クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事は、ABCの報道番組に昨年出演した際、「彼を知っている人なら、誰も驚かない」とした上で、「彼はこの文書をトロフィーとして持っていたかったのだ。何よりもそれが目的だった」と説明。何らかの影響を及ぼす目的ではなく、「”ほら、こんなものがある。こんな機密文書があるんだ”と言って、歩き回っているのかもしれない」と語った。

クリスティ氏は「彼は大統領でないことが信じられず、こうした文書を持っていないことが信じられないからだ」と続け、訪問者らに対して「自分がまだそういうものを持っていることを示す必要があるからだ。マール・ア・ラーゴにしつらえた執務室机のレプリカ、その他もろもろは、自分がもはや大統領ではないことへの失望と不信を和らげるためだ」と語った。

Advertisement

対抗する者への反撃材料

起訴状では、トランプ氏が2021年7月、「ライターと出版者」の取材を受けた際、「軍高官」が作成した「国家A」に対する攻撃計画に関する資料を見せたとされ、その際のやりとりが記されている。

会話はトランプ氏が公認の元で録音されたもので、その中でトランプ氏は、「彼(軍高官)は、国家Aを攻撃したいと言ったのだ。すごくないか?私は資料を山のように持っている」と説明。「これは彼だ。私がやったのではない、これらすべてだ、ほら、こんなに長々と」と資料を指して話し、「これは完璧に私の勝ちだ」と語った。

検察は、この取材が行われる前、「国家A」に対する攻撃をめぐって、「軍高官」がトランプ氏に反対を申し出たとする報道があったと指摘している。

この時の取材者は、政権で大統領主席補佐官を務めたマーク・メドウズ氏のゴーストライターと報じられている。起訴状では明らかにしていないが、「国家A」はイラン、「軍高官」は軍制服組のトップ、マーク・ミリー統合参謀本部議長だった。

取材の数日前、雑誌ニューヨーカーは、イランへの攻撃をめぐってトランプ氏とミリー氏の間で水面下の争いがあったと報じた。

記事は、ミリー氏が、政権末期のトランプ氏がイランとの軍事衝突に乗り出すことを思いとどまらせたとする内容で、制服への忠誠を守り、平和な政権交代を支えたとして、ミリー氏がポジティブに描かれている。ミリー氏は、選挙に敗北した大統領が、政権維持の奇策としてイランへの攻撃をしかけることを警戒していたという。

自分に不利な報道に、トランプ氏は当時、ミリー氏が自ら情報を流して「急進左派のご機嫌取りをしている」などと反論していた。