「エミリー、パリへ行く」ウクライナが激怒

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Netflixのドラマ「エミリー、パリへ行く」(Emily in Paris)が、またまた炎上。ステレオタイプをめぐり、ウクライナ人から非難を浴びた。

同ドラマは、20代のアメリカ人女性エミリー(リリー・コリンズ)が、パリのマーケティング会社で働きながら、インフルエンサーとして活躍するコメディー。HBOドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」のプロデューサー、ダーレン・スターが製作を手がけた。2020年10月に第1シーズンが配信され、昨年末に第2シリーズの配信がスタートした。

問題となったのは4話で、ウクライナ人女性のペトラ(ダリア・パンチェンコ)が登場。強制送還を恐れる無知な女性として描かれており、デパートで万引きするシーンなどが含まれている。

これに対し、一部から非難の声が上がった。英紙ミラーによると、リサーチャーのOlga Matveieva氏は、ペトラについて「ウクライナ人女性を軽んじている」と指摘。「国に基づくステレオタイプ化」であり、「不均衡さを助長し、攻撃性を伴う」と非難した。

批判は、国家ぐるみにも発展。ウクライナ文化省のオレクサンドル・トカチェンコ長官は、描写は「侮辱的」かつ「容認できない」として、製作元のNetflixに抗議文を送ったという。

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英紙ガーディアンによると、トカチェンコ氏は、かつてウクライナ人男性は、主にギャングとして描かれていたが、時代と共に変わりつつあると説明。しかし、今回のドラマについて、「これが外国から見たウクライナ人?盗みをはたらき、全てタダで手に入れようと試み、強制送還を恐れる姿が?そのように描かれるべきではない」と批判した。

「エミリー、パリへ行く」が、ステレオタイプ化を理由に炎上するのは、2回目。シーズン1の配信後、フランスの批評家シャルル・マルタン氏は、Premiereに寄せたレビューで「フランス人は、全てにおいて悪い。怠け者で、午前中に出勤することはなく、浮気者、忠誠概念には関心がなく、性差別主義者で、進歩も遅く、そしてもちろん、シャワーの習慣が変だということが分かるドラマだ」と皮肉を述べ、細部に至るまで、お決まりの表現(クリシェ)で描かれていると批判している。

ニューヨークタイムズは、10人以上のパリジャンの反応として、主人公が英語しか話さない、ラグジュアリーすぎる服装、上司の部下に対する扱い、仕事内容など、さまざまな点において「リディキュール」(滑稽、ばかなかしい、コミカル)だと視聴者の反応を伝えた

これらの指摘を踏まえ、エミリー役でプロデューサーのリリー・コリンズは先月、Elle UKのインタビューで、第2シリーズは「さらに包括性と多様性を取り入れたものになる」と語っていた。

なおニューヨークポスト紙によると、今回のウクライナ文化省の抗議に対し、Netflixは何らかの対応策を示したようだ。
トカチェンコ氏は、「ウクライナの視聴者が抱いた、自国の女性のイメージに対する懸念を理解してくれた」と明かしており、今後の撮影に協力する意向を示しているという。