コロンバイン事件に触発か ロシアの学校で銃乱射事件

99

ロシア中部ウドムルト共和国の首都イジェフスクにある第88学校で26日、銃乱射事件があり、子供11人を含む少なくとも17人が死亡、23人が負傷した。容疑者の男は犯行後に現場で自殺した。ロシア連邦捜査委員会によると、男は2丁の銃で武装し、ナチスの象徴であるかぎ十字が描かれたTシャツを着ていたという。ワシントンポスト紙が伝えた。

ロシア連邦捜査委員会によると、銃を乱射したのは地元在住で同校の元生徒のアルテム・カザンツェフ容疑者(34)。ウドムルト共和国のアレキサンダー・ブレチャロフ首長は、容疑者に精神・神経科の通院歴があったと明らかにした。犯行の動機は分かっていない。

ロシアでは先日、プーチン大統領が兵力増強のため予備役の動員を発表したことを受け、召集を拒否する者の反発が相次いでいる。銃乱射と同日の26日にはシベリア地方のイルクーツク州にある徴兵事務所で職員1人が銃で撃たれる事件があった。ただ、今回の銃乱射事件はロシア情勢をめぐる一連の混乱と直接の関連はないとみられているという。

地元メディアによると、カザンツェフ容疑者は犯行当時、黒のズボン、黒のジャケット、黒の目出し帽、赤い文字でかぎ十字がプリントされたTシャツという出で立ちで現場に現れ、警備員に発砲。その後校舎に侵入し、生徒らに向けて銃を乱射した。

現場の映像から、拳銃を構えた警察官らが階段や廊下で警戒する中、パニックになった子供たちが逃げ惑う様子や、教室の中に隠れて息をひそめる教師や生徒らの様子、現場で銃声が鳴り響く様子などが確認されている。

Advertisement

ロシアの大衆紙「モスコフスキー・コムソモーレツ」によると、逃げようとして校舎3階から飛び降り、足を骨折した7年生の少年もいたという。

地元メディアは現場の写真を公開。それによると、容疑者の遺体の横の机の上には弾倉が積み重なり、弾倉には赤い文字で「憎悪」と書かれていた。また、遺体の近くに組みひもがついた2丁の拳銃があり、組みひもには「コロンバイン」「ディラン」「エリック」と、1999年に米コロラド州コロンバイン高校で起きた銃乱射事件に関連する名前がつけられていた。同事件では生徒ら13人が犠牲になり、事件を起こしたエリック・ハリス容疑者とディラン・クレボルド容疑者は現場で自殺している。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、今回の事件を受けた声明で「非人道的なテロ行為」と非難。プーチン大統領は事件を深く悲しんでおり、ウドムルト共和国の首長や当局者に対し、「必要なすべての指示」をしたと伝えた。

CNNはロシア連邦捜査委員会の発表を元に、捜査官らは、容疑者宅の家宅捜索を開始しており、「ネオ・ファシストのとナチスのイデオロギー」に関するレポートを精査していると報じている。

プーチン氏は、ウクライナ侵攻の目的を一貫してウクライナ東部から「ナチス」を掃討するためだと強調しており、プーチン氏や政権内部、支持者らは、ウクライナ政府を「ナチス政権」だなどと根拠のない主張を繰り返している。

アメリカと比較すると、ロシアでは学校を狙った銃乱射事件はまれだが、昨年5月以降、教育機関で3件の銃乱射事件が起きている。約1年前にはペルミ地方にある国立大学で18歳の大学生が銃を乱射し、6人が死亡、47人が負傷した。昨年5月にはロシア連邦中部タタールスタン共和国のカザンにある学校で、21歳の容疑者が銃を乱射し、子供7人を含む9人を射殺した。

2018年にも、クリミア半島の都市ケルチにある職業訓練学校の生徒が校内で銃を乱射。21人が死亡、67人がけがをし、学校を狙った銃乱射事件としてはロシア史上最悪となった。