米史上初めて任期中に2度弾劾訴追されたトランプ前大統領。1度目は2019年のウクライナ疑惑、2度目は昨年1月の議会議事堂襲撃事件が発端となった。2度目の弾劾手続きでは訴追決議案を採択した下院で、民主党議員222人全員(当時)に加え、共和党から造反した10人が賛成票を投じた。

トランプ氏は造反者に復讐すると豪語し、大統領退任後も事あるごとに攻撃を続けている。10人中4人は今期で引退を表明、6人が続投を目指し今年の中間選挙に出馬している。これら議員の勝敗行方は、トランプ氏の影響力をはかる上でも注目されている。

リズ・チェイニー議員(ワイオミング州)

2017年より現職。議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会で副委員長を務めるチェイニー氏は、共和党の中でも最もトランプ氏に批判的な人物の一人。トランプ氏をアメリカの民主主義の脅威と位置づけ、「トランプ氏に忠実であることと憲法に忠実であることは両立できない」と、共和党にトランプ路線からの脱却を呼びかけた。かつて党のナンバー3の役職である共和党会議議長を務めたが、その声高なトランプ氏批判で昨年ポストを解かれた。

16日に実施される予備選で4期目を目指すが造反者10人中4人は今期で引退を表明、6人は議員続投を目指し今年の中間選挙に出馬している。チェイニー氏も再選を賭け来週開催のワイオミング州共和党予備選に備えているが、地元紙の世論調査によると、トランプ氏が推薦するハリエット・ヘイグマン候補に22ポイント差で劣勢に追い込まれている。ヘイグマン氏は、2020年の大統領選でバイデン氏が勝利したのは不正があったからだと主張する、いわばトランプ派の一人。

ジェイミー・ヘレラ・ビュートラー議員(ワシントン州)=敗退

2011年より現職。弾劾訴追決議に賛成の意向を示した際には「真実を選ぶことで、我々の党が最大限に生かされる。トランプ氏は誓いを破った」と語った。今月2日に行われたワシントン州の予備選挙で上位2位を逃し、再選の道が絶たれた。代わりにトランプ氏が支持するジョー・ケント候補とマリー・ペレズ(民主党)が本選に進んだ。なお、ワシントン州は所属政党に関わらず予備選挙で上位に立った2候補が本選に勝ち進む上位二者制度を採用しており、同制度を採用する州はほかにカリフォルニア州がある。

ピーター・メイヤー議員(ミシガン州選出)=敗退

2021年より現職の1期目。再選を目指すも、今月2日に行われた予備選で、トランプ氏の推薦候補ジョン・ギブス氏に敗れた。ギブス氏はトランプ政権時代の住宅都市開発省の高官で、2020年の選挙結果について「単純に、数学的に不可能だ」と主張するなど、選挙不正説を支持している。

ギブス氏の予備選での勝因の一つに、11月の選挙戦を有利に進めたい民主党の介入が挙げられている。資金力で劣るギブス氏だったが、民主党議会選挙運動委員会が選挙一週間前に、ギブス氏とトランプ氏との繋がりを強調したCMを放送。政治ニュースサイトのポリティコは、CMはトランプ氏との結びつきが説得材料になる有権者を対象としたものであり、独自のCM展開ができなかったギブズ氏の知名度獲得につながったと指摘している。メイヤー氏は「私は自分の信念に忠実であったことを誇らしく思う。それが政治的に大きな代償を伴うものではあっても」と声明を出している。

ダン・ニューハウス議員(ワシントン州)=通過

2015年より現職。弾劾訴追決議案に賛成した際には、「この国にはリーダーが必要だ。トランプ大統領は誓いを全うできなかった」とトランプ批判を展開した。2日に実施された中間選挙予備選では得票数トップで勝利。11月の本選で、民主党のダグ・ホワイト候補と対決する。選挙不正主張を支持するトランプ氏推薦のローレン・カルプ候補は3位に終わった。

トム・ライス議員(サウスカロライナ州)=敗退

2013年より現職。弾劾訴追決議案採択のあと、トランプ氏について「困難に直面しながらも、私は大統領を4年間支持してきた。彼の選挙活動を支え2度彼に投票した。しかしこれは言い訳できない失敗だったと思っている」と語った。

再選を目指していたが、6月の予備選でトランプ氏が推薦する新人のラッセル・フライ候補に約25ポイントの大差で敗れた。トランプ氏はフライ氏への支持表明で「サウスカロライナのトム・ライス議員はナンシー・ペロシ(下院議長)や極左に丸め込まれて自分の信念を捨て、嘘にまみれた2度目の弾劾訴追で賛成票を投じ私に反発した。すぐにでも政界から追い出すべきだ」と、批判を展開した。

デビッド・ヴァラダオ議員(カリフォルニア州)=通過

2021年より現職の1期目。弾劾訴追決議案採択のあと、「トランプ大統領は間違いなくこの破滅的な出来事(議事堂襲撃)を掻き立てた」と声明を出した。

中間選挙予備選に出馬。元フレズノ市議会議員のクリス・マシス候補を抑えて2位につけ、本選に勝ち進んだ。再選を目指す造反議員6人のうち唯一、トランプ氏の支持する候補と対戦していない。ちなみにマシス候補は、投票用紙の肩書を「トランプ派の保守派/実業家」とするよう求めたが却下されたため、州務長官を提訴したというエピソードがある。

ヴァラダオ氏は本選で民主党の対立候補ルディ・サラス州議員と対戦するが、区画整理で選挙区が民主党寄りになったため、苦戦を強いられると見られている。

上記6議員のほかに弾劾訴追決議に賛成票を投じたアンソニー・ゴンザレス議員(オハイオ州)、アダム・キンジンガー議員(イリノイ州)、ジョン・カトコ議員(ニューヨーク州)、フレッド・アプトン議員(ミシガン州)は、引退を表明している。