中国とインドもついていけない、孤立深めるプーチン

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    ロシアによるウクライナ侵攻、これがプーチンの大統領生活の中で最大の汚点になることは間違いない。プーチンはロシア系住民を守るためだとしてウクライナへ侵攻した。首都キーウを掌握し、ゼレンスキー政権を崩壊させ、親ロシアの傀儡政権を樹立する野望を持っていたが、もうそれは粉々に打ち砕かれた。

    軍事的劣勢が顕著になるにつれ、ロシア国民を戦場に動員し、ウクライナ東部4州を勝手にロシアに併合した。今となっては、プーチンの劣勢を疑う者はいないだろう。そして、今では核兵器を使うなどと脅しを掛けているが、どんな核を使えど、ロシアのイメージ底化は避けられず、プーチンは“ロシアンヒットラー”として世界中の世界史の教科書に永遠に残り続けるだろう。

    そして、そんなプーチンをこれまで非難してこなかった中国やインドも“もう貴方にはついて行けません”という姿勢を示し始めている。たとえば、インドのモディ首相は9月にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでプーチン大統領と会談し、「今は戦争や紛争をやっている時ではない」と明白にウクライナ侵攻を批判した。インドは長年軍事面でロシアに頼っており、両国は長年の友好関係にある。モディ首相としても本当はロシアを批判したくないが、プーチンの暴挙によって世界で物価高に歯止めが掛からず、インドもその影響を重く受けていることから、“プーチンさん、貴方のやっていることは間違ってますよ”と釘を刺したのだ。

    対米国でロシアと関係を強化していたと思われる中国の習国家主席も最近、プーチン離れを見せている。習国家主席は9月にウズベキスタンで開催された上海協力機構の首脳会合に合わせてプーチンと会談したが、冒頭で互いに中ロ関係の重要性を指摘したものの、問題がウクライナ情勢に移ると習国家主席は無言を貫き、プーチンは“ウクライナ情勢を巡る中国側の疑問や懸念を理解している”とした上で、“習氏のバランスの取れた姿勢を高く評価している”と述べたのだ。要は、プーチン自身もお友達である習国家主席が懸念を抱いていると察知し、でも関係を失いたくないという想いから上述のような発言になったのだ。

    プーチンにとって、中国やインドとの関係を失うことは、欧米から制裁に遭う以上に何倍も心理的な代償が大きいことだろう。残された道は、本当に戦闘を停止させる、もしくは謝ることしかないのかも知れない。

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    ■筆者 カテナチオ:世界情勢に詳しく、特に米中やロシア、インド太平洋や中東の外交安全保障に精通している。現在、学会や海外シンクタンクなどで幅広く活躍している。