ノーベル賞受賞経済学者「インフレとの闘い」の終結を宣言するも、ネットでツッコミ殺到

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ノーベル賞受賞経済学者のポール・クルーグマン氏(Paul Krugman)は12日、Xのアカウントを更新し、インフレとの闘いがついに終わりを迎えたとの見解を示した。しかし、ネットでは誤解を招くとして批判が相次いだ。

「インフレとの闘いは終わった。ほとんどコストをかけずに勝利した」

クルーグマン氏が添付したチャートは、2023年9月の米国の消費者物価指数の伸びが前年比で2%以下になったことを示唆している。ところがこのチャートでは、食品価格とガソリン価格、住居費、中古車価格の値が除かれている。

あるユーザーは「人々の生活に必要なすべてを除外している」とツッコミ。そのほかにも「ほとんどの人々の月々の支出の90%を取り除いてしまえば、明らかに問題ないだろうよ」「正確には何に勝利したの?高騰する価格、実質賃金の減少、貧富の格差の拡大?」「食品、住居、燃料、電力を必要としないすべてのアメリカ人にとってめでたいニュースだ」「ポール・クルーグマンは経済学者ではなく、バイデン政権のあからさまなプロパガンディストだ」といったコメントが投稿されている。

 米労働省が同日発表したCPIは前月比で0.4%、前年比で3.7%上昇した。市場の予測はそれぞれ0.3%と3.6%だった。

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12-month percentage change, Consumer Price Index

発表によると、住居費(前月比0.6%)が上昇に大きく貢献。CPI上昇の半分以上を占めた。ガソリン価格は2.1%上昇、食品価格は0.2%上昇した。

価格が不安定で、国際的なサプライチェーンに問題に影響されやすい食料品とエネルギーを除いたコア指数は前年比4.1%上昇した。ここからさらに住宅費を除いた「スーパーコア・インフレ」に言及する経済学者もいる。

パウエルFRB議長は以前、スーパーコアが「コア・インフレの将来の展開を理解する上で最も重要なカテゴリーかもしれない」と主張している。ただし、クルーグマン氏がなぜ中古車も省いたのか明らかではない。

FRBは、2%のインフレ目標を達成するため、昨年から11回の利上げを実施。現在の金利の誘導目標は5.25%から5.5%で、22年ぶりの高水準に達している。前月からの価格上昇率は8月の0.6%に比べて改善したが、インフレ対策が完全に軌道に乗っているとは言えないとして、専門家の一部からは年内のさらなる利上げの可能性を指摘する声が上がっている。