NYCフェリー、利用者の人種と所得に偏り

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ニューヨーク市のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長が、市内の渋滞解消を目的として2017年に導入した新交通システムNYCフェリー。当初すべての市民のためと、包括性をアピールしていたが、調査の結果で、利用者が一部の人種や所得層に偏っていることが明らかとなった。

ニューヨーク市経済開発公社(NYEDC)が、今年5月から6月に実施した調査では、利用者の64%が中高所得層の白人であることが分かった。
利用者の年収の中央値は、7万5,000ドル(約800万円)から9万9,999ドル(約1,070万円)。利用者の半数が、年収10万ドル以上と回答している。7万5,000ドル以下の利用者は36%以下だった。

米国勢調査局で、ニューヨーク市の平均世帯年収の中央値は6万3,799ドル(約680万円)とされており、フェリー利用者の年収はこれよりも高い。

会計監査官が2017年に実施した調査では、地下鉄利用者の約66%、バス利用者の約75%は有色人種だった。また、地下鉄利用者の年収中央値は4万ドル(約430万円)で、バス利用者は2万8,455ドル(約300万円)となっている。

多額の補助金も問題に

NYCフェリーの利用客数は1,200万人にのぼる。運営は民間企業に委託されており、費用の高さが指摘されている。
運賃は、地下鉄やバスの乗車料金と同じ2.75ドルだが、昨年は1回の乗車につき平均10.73ドルの補助金が税金で賄われた。

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市民予算委員会(Citizens Budget Commission)の試算によると、MTAバスが1回の乗車につき、4.92ドルの補助金に対し、フェリーはその2倍となる。委員会はフェリーの運賃を値上げするよう求めているが、市は地下鉄やバスと同額にすると主張している。

地元紙amNewYorkによると、デブラシオ市長は、2022年までに6億3,850万ドル(約680億円)の設備投資を行うと発表している。
NYEDCは、来年以降に航路開設を予定しているスタテン島やブロンクス、コニーアイランドなど、より低所得層の人々が住むエリアでも利用しやすくなると述べている。

コリー・ジョンソン(Corey Johnson)市議会議長は、今回のNYEDCの調査結果に対し、「低所得の市民は、地下鉄やバスを利用しており、高額の補助金を拠出することに、疑問の余地がある。」と述べた。さらに「交通政策に関しては、バスの高速化と電車の遅延率の低下に集中すべきだ。」と批判的な姿勢を示した。