ヘイトクライムでも起訴 「ソーホーカレン事件」とは

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携帯電話を盗んだと誤って黒人少年を非難し、警察に通報するなどした「ソーホーカレン」ことミヤ・ポンセット(Miya Ponsetto)容疑者が30日、ヘイトクライムとしての不法な監禁や悪質な嫌がらせ、児童福祉を危険にさらした罪で、新たに起訴された。

ポンセット氏の弁護士ポール・デミリアは同日、オンラインでマンハッタンの地方裁判所に出廷。被告人の無罪を主張した。

デミリア氏は声明で、サイラス・ヴァンス・ジュニア検事長は「2人の若者同士の不幸な事件に対し、民事的かつ啓発的な和解策を促す代わりに、ヘイトクライムの重罪で起訴するという卑劣で日和見主義な手段を選んだ」と主張。「明らかに法の意図を超えた、恥知らずな申し立てだ。法制度を乱用し、悪用している」と非難している。

次回公判は、10月20日に設定された。

「ソーホーカレン事件」

事件は昨年12月26日、ソーホーにあるブティックホテル「アーロ・ホテル」のロビーで起きた。
ポンセット氏は、その場にいたキーヨン・ハロルド・ジュニアさん(当時14歳)が携帯を盗んだと非難。少年にポケットの中を見せるよう求めたほか、執拗に追いかけ回すなどした。後に、携帯電話はウーバーの車内に起き忘れていたことが判明した。

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少年の父親は、著名なジャズ演奏者のキーヨン・ハロルド氏。この騒動を撮影した映像をSNSに投稿に投稿したところ、ポンセット氏は「ソーホーカレン」と名付けられ、批判を浴びた。

ニューヨーク市警察が公開した防犯カメラの映像では、ポンセット氏が少年を追いかけ、引き倒す様子が映っていた。

ポンセット氏は1月、カリフォルニア州ベンチュラ郡の自宅付近で拘束された後、ニューヨーク市で、第3級の強盗未遂や重窃盗、子供への有害行為、2件の暴行未遂で起訴されている。

ポンセット氏は事件後、弁護士を通じ「人種差別的な発言は行っていない」と人種偏見に基づく行為の可能性を否定していた。
拘束される前、CBSのイニンタビューに出演したポンセット氏は、自身はプエルトリコ系の有色人種であり、人種差別ではないと主張。「22歳の若い少女だ」と強調し、「大変優しい人間で、親子を傷つける意図はなかった」と弁明した。家族への謝罪を口にしたが、インタビュアーを「もう十分。携帯は最終的には戻った」と遮るなど、反省の色は見られなかった。

ポンセット氏が直面している法的問題は、刑事裁判に限らない。ハロルドさん一家は今年3月、人権活動家のベン・クランプ弁護士を通じ、ホテルが公共施設での差別を禁じる市の人権法に違反したとして、ポンセット氏とアーロ・ホテル、支配人のチャド・ネーサン氏を提訴している