トランプ弁護団 元フィクサーの「メルトダウン」作戦は不発?口止め料裁判

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4月にスタートした通称「口止め料裁判」では14日、かつてトランプ氏の「フィクサー」と呼ばれた元弁護士マイケル・コーエン氏に対して、弁護側の反対尋問が行われた。

コーエン氏は2016年の大統領選直前、トランプ氏と2006年に関係を持ったとされる女優ストーミー・ダニエルズ氏に口止め料を支払い、代わりに秘密保持契約を締結させた本人で、裁判の重要証人とされる。検察は、支払いは選挙結果に影響を与える違法な取り組みの一環で、トランプ氏はコーエン氏に分割で払い戻す際に業務記録を偽装し、これを隠蔽しようと試みたと主張している。

前日の証言では「全てにおいてトランプの承認を必要とした」「つべこべ言わずにやるんだ」など、支払いをめぐるやりとりを明かし、トランプ氏の指示によるものであったと主張した

トランプ氏の弁護側はこの日、コーエン氏の証人としての信頼性や動機に焦点を当て、2018年に選挙法違反や議会への偽証で有罪判決を受けたコーエン氏が、昨年の民事訴訟で再び偽証した問題や、トランプ氏に敵対的なポッドキャストや書籍を通じて生計を立てていると非難した。

MSNBCなどの報道によると、トランプ氏の弁護士トッド・ブランチ氏は、コーエン氏のこれまでのSNS上の発言にたびたび言及。「彼は小さな檻に行くんだ。動物のようにf***ing ケージが相応しい」「チートまみれの漫画の悪役」と述べるなど、元上司であるトランプ氏に強い憎悪や復讐心を抱いていると説明した。コーエン氏が動画の中で「受刑者45」と書かれたピンやトランプ氏がオレンジの囚人服を着たTシャツを身につけたり、「SEND HIM TO THE BIG HOUSE NOT THE WHITE HOUSE」と書かれたマグを持っていたとしたほか、自身のポッドキャスト「Mea Culpa」では200を超えるエピソードにわたってトランプ氏に言及したとも指摘。さらに、著書を執筆して、出版社から巨額の契約金を受け取っていると陪審にアピールした。

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コーエン氏は冷静でありながら、時折好戦的な態度を示したとされる。SNSでの発言について「視聴者を集め、コミュニティを作ろうとした」「愚痴るため」と答え、また「金が稼げる。たいした額ではないが」と加えたという。

この一方で、トランプ氏を称賛する場面もあった。トランプ氏の1987年の著書「The Art Of The Deal」を二度読んだと明かし、「マスターピースだと思うか?」という質問に同意を示した。「(かつては)ドナルド・トランプのカルトにどっぷりとつかっていた」「彼を非常に尊敬していた」とも振り返った。

さらに、陪審に「彼のためにすべきでないことをしたこと、ゴールを達成するために嘘をついたり、人々をいじめたことを後悔している」と反省の弁を述べたという。

ニューヨークタイムズは、トランプ氏の弁護団の尋問について「ノックアウトの一撃はなかった」と評価。コーエン氏が「メルトダウンすることが予想」されたが、2日間の尋問では、おおむね平静を保ち、「簡潔な回答で、本題から逸れることはほとんどなかった」と指摘した。

なお、トランプ氏が証言台に立つかどうかはまだ不明。ブランチ氏はマーシャン判事に対し、被告が証言する可能性があると伝えたものの「まだ決定していない」と回答したという。