米上院司法委 最高裁判事候補カバノー氏と性的暴行被害女性の公聴会実施へ

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米上院司法委員会のチャック・グラスリー委員長(共和 アイオワ州)は17日、米最高裁判事候補のブレット・カバナー氏(Brett Kavanaugh)と、1980年初頭にカバノー氏から性的暴行を受けたとするパロ・アルト大学のクリスティン・ブレイシー・フォード教授(Christine Blasey Ford)の公聴会を24日(月)に開催することを発表した。

公聴会に伴い、20日に予定していた上院司法委員会における投票は延期されることとなる。

カバノー氏の性的暴行疑惑については、ダイアン・ファインスタイン上院議員(民主 カリフォルニア州)にフォード氏が被害を記した文書が渡されていたことが、12日のInterceptの記事によって明るみに出た。この時点で、フォード氏は事件を秘匿とすることを希望していたため、ファインスタイン上院議員は上院司法委員会に公表していなかった。Interceptによる報道後も、グラスリー委員長は、20日の投票を予定通り行う意向を示していた。しかし16日に、ワシントンポスト紙にフォード氏が実名で事件を告白することで事態は一変。民主党議員を中心にFBIによる捜査と投票の延期を求める声が高まり、公聴会が実施されるに至った。

フォード氏の代理人をつとめるデブラ・カッツ氏は17日にCBSニュースに出演。フォード氏が委員会で”完全な”証言を行うことを望んでいると、自らの意思であることを述べた。一方で「不幸なことに、今朝、すでに共和党が厳しく追及する意向であることを聞き知った」と述べ、公聴会は「真実にいたるためのもので、すでにトラウマに苦しむ人物をおびえさせるものではない」と懸念を示した。カッツ氏は今年、性的暴行疑惑で辞任したエリック・シュナイダーマン元ニューヨーク州司法長官から暴行を受けたとされる女性の代理人を務めている。

公聴会に関しトランプ大統領はインタビューで、「すべてが完璧で、すべてが正しくあるために、我々はこのプロセスを実施してほしい」と同意を示す一方、「民主党にもっと早くこれをしてほしかった」と述べ、最高裁判事承認を中間選挙後に延期したい民主党をけん制した。(一部報道では、フォード氏の手紙は7月にファインスタイン氏に渡されていた。)

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11名の共和党議員と10名の民主党議員で構成される上院司法委員会で、カバノー氏にとって公聴会は、中道のスーザン・コリンズ上院議員(共和党 メイン州)とジェフ・フレーク上院議員(共和党 アリゾナ州)の納得を得られるかが鍵となる。コリン議員は「カバノー判事は出来事について嘘をつくならば、明らかに失格だ」と述べ、フレーク議員は「疑惑が本当ならば、反対票を投じる」と記者団に語った。

カバノー氏とフォード氏の公聴会を、1991年のアニタヒル事件の再来と報じるメディアも多い。1991年、クラレンス・トーマス氏の最高裁判事の承認にあたり、同氏からセクハラを受けたとする部下のアニタ・ヒル氏からFBIが聴取を行なっていたことが発覚。民主党はヒル氏を議会に呼び、公聴会を実施。両者の証言の様子はテレビで放送され、国民から大きな注目を集めた。結果、トーマス判事は承認を勝ち取ることとなる。CNNの取材に対し、NPR(米公共ラジオ局)のニーナ・トーテンバーグ特派員は、準備期間が短いことから、議員らが十分な準備を行えず「サーカスとなってしまう」と懸念を表明。アニタ・ヒルの教訓を生かし、公聴会前にFBIの聴取を実施することや、議員らが事実を十分に把握するため時間が必要だと述べた。

アニタヒル事件は、2016年HBOによって映画化。アニタヒル役をケリー・ワシントンが、クラレンス・トーマス判事をウェンデル・ピアースが演じた。

最高裁判事候補 カバノー氏に性的暴行疑惑 被害女性が実名告白