ゼレンスキー氏米議会演説にロシア「致命的な過ち」「操り人形」

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米国への電撃訪問を果たし、首脳会談および議会で演説をこなしたウクライナのゼレンスキー大統領について、ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は、「和平の準備がない」ことを示し、「代理戦争」継続を訴えたに過ぎないと主張。挑発行為は、想像を超える結果を招くと警告した。

ロシアの侵攻開始から300日が経過した21日、ゼレンスキー大統領は、米国の軍事、経済支援に感謝を述べるとともに、東部ドンバス地域の都市バフムートで続く戦闘に触れ、「ロシア軍を完全に撤退させるには、さらなる大砲と砲弾が必要だ」と支援継続の重要性を訴えた。米国による経済支援は「慈善行為ではなく、世界の安全保障と民主主義に対する投資」だと述べ、「我々の勝利を早めることが可能だ」と主張。「テロリスト国家に、テロと侵略の責任を負わせ、すべての損失を補償させよう。米国がここにあるとを世界に示そう」と、リーダーシップに期待を示した。

演説の最後には、ゼレンスキー氏がペロシ下院議長に、バフムートの兵士らの寄せ書きの入ったウクライナ国旗を手渡し、ペロシ氏からこの日議事堂に掲げられた星条旗が渡された。

アントノフ氏は同日、テレグラムに記者の取材に対する回答を投稿し、その中で、「ハリウッドスタイルのワシントン訪問」は、ウクライナ政府のこれまでの融和的な声明が「空虚な言葉」に過ぎないことを確認させたと主張。スピーチで語られたのは、完全な勝利を収めるまで、「代理戦争を継続する必要性」だったと述べた。

米国が供与を決定した地対空ミサイルシステム「パトリオット」について、ウクライナには「これを扱うスペシャリストがいない。アメリカのスペシャリストか?」と述べつつ、「米国の挑発行為は着実にエスカレートしており、その結果は想像さえできない」と警告。今後、ATACMSなど長距離兵器の供与の可能性をめぐる議論は憂慮すべき、と牽制した。ゼレンスキー氏の訪米の焦点は「ワシントンのニーズにウクライナ政権を結びつけることにあった」とも話した。

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ロシア下院国際問題委員会のドミトリー・ベリク議員は、ゼレンスキー氏の訪米を受け、米国との同盟関係は、悲惨な結末を迎えることになると主張した。

ニューズウィークが、RIAノーボスチ通信の報道を元に伝えたところによると、ベリク氏は「米国のすべての同盟国は悲惨な結末を迎え、傍観者になるか、歴史のゴミ箱に葬られる」と指摘。「何百年も続いている」と続け、「アメリカの味方は、唯一彼ら自身であり、残りのすべては、彼らの繁栄を保証する脇役で、何か起きれば裏切られる」と話した。ゼレンスキー氏は、味方の選択に「致命的な過ち」を犯したとも述べ、「米国を同盟国だとみなしているだろうが、彼らにとっては交渉の切り札に過ぎない。しかし今は有益だ」と話した。

タス通信によると、外務省のザハロワ報道官は「ゼレンスキー氏は経済と軍事支援を要求しにやってきた」としつつ、「その経済援助を最終的に得る人々によって連れてこられた」と主張。「軍事および比喩的な意味で、後にお金が戻ってくる場所にいる人々」が「彼を操り人形のように連れてきて、みんなに見せて、飛行機に乗せて送り返した」と話し、「米国議会の誰もがウクライナ政府がさらなる支援が必要であることに疑いを抱かないよう、すべてが提示された」と語った。