エプスタインは「スパイ」だったのか

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Jeffrey Epstein mansion
マンハッタンにある元ジェフリー・エプスタイン宅©MashupReporter

2019年、未成年少女を巻き込んだ性的人身売買の罪で起訴された後、拘置中に自殺したジェフリー・エプスタイン。その死後、ビル・クリントン元大統領、ドナルド・トランプ前大統領、ビル・ゲイツ氏、アンドリュー英王子ら著名人との関係や、彼の莫大な資産の出どころをめぐり、謎が深まっている。

元高校教師だったエプスタインは、マネーマネージャーへと転身。ニューヨークやフロリダ、パリに豪邸を持ち、ヴァージン諸島には2つの私有島を所有。プライベートジェットで世界を飛び回っていた。ヴァージン諸島の当局は、島で11歳の少女を含む数百人が性的虐待を受けたとし、国際的な人身売買ネットワークが運営されていたと訴えている。

税務上の拠点としてヴァージン諸島に資産管理会社を設立していたエプスタインだが、その企業はフォーブスによると公的記録もなく、顧客情報も不明。彼の財源は親しい関係者にさえ「謎」とされ、“摩訶不思議”とも囁かれていた。

巨額資産の裏に「スパイ」と「武器取引」?

英ジャーナリスト、ヴィッキー・ワード氏は『ローリングストーン』誌で、エプスタインの過去に迫る証言を紹介している。語ったのは、1980年代後半に彼を雇っていた実業家スティーブン・ホッフェンバーグだ。

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ホッフェンバーグはかつて、債権回収会社「タワーズ・フィナンシャル」を設立。しかし、1990年代に米史上最大規模のポンジ・スキームで逮捕され、1995年に有罪判決を受けた人物だ。18年間の服役を経て、2013年に釈放されている。

彼によれば、エプスタインは1980年代に投資銀行「ベア・スターンズ」を退社した後、資金の海外移動に関する訓練を受けたという。そのときのメンターが、イギリスの軍需業界に関わっていたダグラス・リースという人物だった。

リースは武器商人であり(親族は否定している)、エプスタインをヨーロッパの貴族社会やサウジの兵器ブローカー、そしてギレーヌ・マクスウェルの父ロバート・マクスウェルらに引き合わせた張本人だった。紹介された人物には、サウジアラビアの武器商人のアドナン・カショギや現在勾留中のギレーヌ・マクスウェル被告の父、ロバート・マクスウェルがいた。

さらに、エプスタインはロバート・マクスウェルと複数のプロジェクトで協力し、ロバートとリースを通じて「恐喝や斡旋、情報取引」など「非常に深刻で危険なレベル」の「国家安全保障に関わる問題」に関与していると明かしたことがあったという。

モサド、イスラエル、そして世界のリーダーたち

ロバート・マクスウェルは1991年、自身のヨットから転落して死亡。事故か自殺か、あるいは他殺かと噂が絶えないが、イスラエルの情報機関モサドとの関係も取り沙汰されている。

ワードは、エプスタインがロバート経由でイスラエルの指導者に紹介され、モサドのスパイとして活動していた可能性があると指摘する。

彼女によれば、エプスタインは過去10年間ほど、ジャーナリストたちに「プーチン大統領」「サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子」「アフリカの独裁者たち」、さらには「イスラエル・イギリス・アメリカの要人」に助言していると自慢していた。

また、「自分は武器、麻薬、ダイヤモンドで財を築いた」と豪語していたといい、その発言の真偽は別としても、彼の資産と人脈にまつわる疑惑は、今なお尽きない。