「ヒールを履いたブッシュ」トランプ派議員 出馬表明のニッキー・ヘイリーを攻撃

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今週、次期大統領選への出馬を表明した共和党のニッキー・ヘイリー元国連大使に、トランプ前大統領の熱烈な支持者として知られるマージョリー・テイラー・グリーン下院議員が噛みついた。

ヘイリー氏が地元サウスカロライナ州で出馬宣言後最初の選挙集会を行った15日、グリーン議員は早速ツイッターでヘイリー氏の攻撃を開始。「移民の国境越えに弱腰。壁を建てようともしない。『最近では、合法的な移民はアメリカ人よりも愛国心がある』とまで言った。国境の開放を目指したオバマの酷い政策をトランプ氏が批判したときも、オバマを擁護していた」とコメントした。

さらに「ニッキー・ヘイリーはもう一人のジョージ(またはジェブ!)・ブッシュだ」「ヒールを履いたブッシュを望むのなら、共和党はリズ・チェイニーに投票するだろう」と、同じ共和党でトランプ氏と距離を置くブッシュ兄弟やチェイニー元下院議員にも批判の矛先を向けた。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領はトランプ氏と一貫して距離を置き、その弟のジェブ氏は2016年大統領選の共和党指名争いに出馬したがトランプ氏の勢いに押され早期に撤退した経緯がある。ブッシュ政権時代の副大統領、ディック・チェイニー氏の娘で、かつて下院共和党ナンバースリーの立場にあったリズ・チェイニー氏は、議会襲撃事件をめぐってトランプ氏と対立を深めた後、党の主要なポストを降ろされ、昨年の中間選挙では高い知名度にも関わらず、予備選で対抗馬に敗北した。選挙直後のインタビューでは、大統領選の出馬を検討していることを認め、今後数カ月以内に決断を下すと話していた。

グリーン議員は、2016年頃に米国で“トランスジェンダーに差別的”と政治的論争の的になった「トイレ法」についても、「子供を守るためのトイレ法なのに、ヘイリー氏は支持しなかった」とヘイリー氏の姿勢を批判した。トイレ法は、男女トイレの利用は出生証明書に記載された性別に基づくと定めたもので、南部の保守色の強い州が相次いで制定したが、トランスジェンダーの人のトイレ利用を阻むとして賛否の議論を巻き起こした。当時、サウスカロライナ州知事を務めていたヘイリー氏は、同法について「必要ないと考えている」と否定的な意見を語っていた。

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グリーン議員がへイリー氏を攻撃する理由はトランプ氏に対抗したこともあるが、別の思惑も見え隠れしており、トランプ氏が指名を勝ち取った暁には自分が副大統領候補に選ばれることを目論んでいるとも噂されている。

一方のトランプ氏も、ヘイリー氏の出馬表明を受けて早々に攻撃を開始した。トランプ氏個人ではなく陣営スタッフから言及する形で、「ヘイリー氏の主張は一貫しない」、「宿敵の民主党、ヒラリー・クリントン氏や、トランプ氏とたびたび対立した共和党のポール・ライアン元下院議長と似ている」、などと指摘した。

トランプ氏は2017年の自身の政権発足時、最初の国連大使としてヘイリー氏を指名。ヘイリー氏も、過去にはトランプ氏に対抗して出馬することはないと忠誠心を示していたが、前言を翻した形となった。トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で「ニッキーには、野心や信念ではなく自分の心に従うように言った。どうも妙なことが起きたようだ。世論調査では支持率1%か。スタートとしては悪くない」と、出馬表明を歓迎しているとはいい難いコメントをしている。

ヘイリー氏は今週、サウスカロライナ州に続きアイオワ州、ニューハンプシャー州と、指名争いの序盤で投票が行われる州を相次いで回り、選挙活動を本格化させたが、リアルクリアポリティクスの最新の調査によると、支持率ではトランプ氏、デサンティス氏、ペンス前副大統領に次ぐ4位にとどまっている。