独立戦争の象徴「ガズデン旗」とは?学校が禁止で物議

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コロラド州の学校で、12歳の生徒がバックパックにつけていたワッペンが人種差別的だとして、授業への参加を拒否された。母親は学校の主張は間違いだと反論。ネットでは、州知事や連邦議員を巻き込んだ議論に発展している。

きっかけは29日にX(旧ツイッター)に出回った動画。その中で学校の職員は、12歳の少年と母親に、ワッペンに描かれたイラストの起源は、奴隷制に関係していると説明。「それが今回の理由だ」と述べ、ワッペンをつけたままでは教室に復帰できないと告げた。

学校側が問題視したのは「ガズデン旗」と呼ばれるシンボルで、黄色の背景にとぐろを巻いたガラガラ蛇のイラストと「私を踏むな」と標語が描かれている。

ブリタニカによると、旗の規格は、アメリカ独立戦争が始まった1775年、大陸会議のサウスカロライナ代表で、サウスカロライナ軍の指揮官に任命されたクリストファー・ガズデン氏によって考案された。ヘビは13の植民地の結束を表し、標語には、英国に対して人々の自由を侵害するなといった警告の意味が込められている。エセク・ホプキンス海軍総司令官が艦船に掲げたことから、ホプキンス旗とも呼ばれる。

これを知っていた母親は、職員に反論。「奴隷制とは何の関係もない。英国と戦ったときに掲げられた独立戦争のワッペンのようなもの」と述べ、南北戦争の南部連合旗と勘違いしているのではないかと示唆した。

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職員は、学区の方針に反していると述べ、学校の運営責任者に対応を引き継ぐと説明した。母親が方針が書かれたものを示すよう要求するところで動画は終わる。

責任者は母親に送ったメールで、旗が許容できない理由だとして、米国雇用機会均等委員会(EEOC)の判断や識者の見解が記された記事のリンクを指し示した。

EEOCは、2014年に郵便局職員が提出した職場におけるガズデン旗の着用をめぐる申し立てについて、人種差別的かどうかについて判断を下していない。ただし「シンボルの歴史的起源や意味が何であれ、それ以来、何らかの文脈で人種的なメッセージを伝えるものとして解釈されることがある」とし、郵便局に問題を調査するよう命じた。

アイオワ州立大学でグラフィックデザインを教えるポール・ブルスキ教授は、同旗について「制作者の歴史とともに、トランプ2020旗と南軍旗、その他の白人至上主義者の旗と並んで掲げられることが多いため、不寛容と憎悪、または人種差別の象徴と見なす人もいる」と説明している。

親子と職員の議論を撮影した動画については、SNSでコロラド州のジャレッド・ポリス州知事(民主党)に意見を求める声が上がった。ポリス知事は、2018年の選挙時、同性愛者を公言しながら知事選に勝利した初めての人物として注目を浴びた。

これを受け、ポリス氏は「ガズデン旗は独立戦争の誇り高き象徴であり、英国やその他の政府に対してアメリカ人の自由を侵害するなという象徴的な警告だ。今日まで人気のメダルやチャレンジコインにも使用され、ベンジャミン・フランクリンも13の植民地の結束を象徴するために採用したのだ」と投稿。「これは歴史の授業を教える最適な瞬間だ」と、暗に生徒を擁護した。

トランプ氏の2回目の弾劾裁判で検察官役に加わったテッド・リュウ下院議員(民主党)も、学校の判断に反対を表明。「学校でのLGBTQの旗を禁止する保守的な学区に反対するのと同じ理由で、学校でのガズデンの旗の禁止に反対する」と述べ、「子どもたちにありのままの自分になってもらい、情報の世界を与えてください。生徒たちは自分にとって何が重要かを理解できるようになる」と加えた。