レッドウェーブは「さざ波」?共和党に警戒感

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共和党大勝との予測もあった中間選挙だが、本番を約二ヶ月後に控え、党内や支持者から「レッドウェーブ」は来ないのでは、と懸念する声が上がっている。

共和党のストラテジスト、リック・タイラー氏はThe Hillの取材に「熱意を感じない」と説明。「前回の共和党のあたり年では、包括的な世論調査で6ポイントリードしていたが、今はわずか2ポイント差だ」と指摘し、「だから絶対に(レッドウェーブは)起こらない」と悲観的な予測を示した。

リアル・クリア・ポリティックスが集計する世論調査の平均値では、共和党は4月の段階で4ポイント近くの差を保っていたが、8月28日現在、その差は1ポイント以下に縮小した。下院で圧勝し、多数派に返り咲いた2010年の中間選挙では、共和党は各社の世論調査で4~6ポイントリードしていた。

CBSニュースは共和党の下院の議席獲得予測を下方修正し、7月の230議席から226議席に変更した。過半数(218)を占めることに変わりはないものの、共和党の勢いを弱めている要因に、最高裁による人口妊娠中絶判決や6月に5ドル/ガロンに到達したガソリン価格が低下している点を指摘。さらに、中間選挙は例年、現職大統領が国民投票にかけられる意味合いが含まれるが、今回に関しては、トランプ前大統領も支持不支持に関係なく、大きな要因であるとした。

選挙の鍵を握る無党派層の間では、トランプ氏について不支持が支持を上回っており、半数がトランプ氏を投票の決定要因に挙げているという。先日のFBIのトランプ邸に対する家宅捜索も、6割近くが、国家の安全保障を守るための正当な判断とみなしている。

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民主党は、選挙がバイデン氏や党指導者に対する国民投票になることを避けようと、共和党とトランプ氏、過激主義との関連といった否定的な側面を有権者にアピールすることに努めている。

先週行われた下院の空白議席を埋めるニューヨーク州第19区の特別選挙は、共和党が接戦地区で奪還を狙う議席の一つと定めていたものの、民主党候補者に敗れた。共和党のマーク・モリナーロ候補は、インフレや経済問題といったトピックに固執したが、民主党のパット・ライアン候補は中絶問題を重点的に攻め、僅差で勝利を獲得した。民主党議会選挙運動委員会の報道官、トミー・ガルシア氏は、この結果について、声明で「MAGA共和党は、有権者が危険な過激主義に目を向けないことを望んでいたが、NY19区は、有権者が彼らの過激主義のアジェンダを拒否したことを示した」と発表した。

この状況に共和党支持者からは、進路の変更を迫る声も上がっている。

保守派の論客として人気のベン・シャピーロ氏は29日、「共和党が2022年選挙で勢いを失っている」とした上で、「民主党がトランプを議論の中心に置き続けたがっているのは、理由がある」と指摘。「無党派の半分はトランプが投票の主要な要因だとしていて、4対1で民主党寄りに割れている」と説明した上で「共和党はそれをやってはならない。痛い目にあう」と警告した。また、共和党は「トランプのような魔法の人物」がいれば、民主党を倒せると信じていて、トランプ氏が攻撃されると、ただちにトランプ氏を議論の中心に据えるが、すべての世論調査が示しているとおり、これは自らを傷つけていると主張。FBIの家宅捜索は政治的攻撃のように見える、と共和党やトランプ支持者らの主張に同調を示しつつ、「共和党がトランプについて話せば話すほど、当選が遠のく」と警戒感を示した。