カリフォルニア州「最大約15万円」インフレ救済給付金の配布スタート、悪循環との指摘も

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歴史的な物価高騰が家計を直撃するなか、カリフォルニア州は「中間層向け還付金」と名付けられた、1世帯当たり最高1050ドル(約15万円)の支援金の給付をスタートした。給付総額は95億ドル(約1兆4000億円)と同州のものとしては過去最大。

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は声明で、「我々は物価の急騰を実感している。カリフォルニアは州民を支援するため還付金を配布する。家庭の食料品やガソリン代をまかなうため1000ドル余りを支給する」とした。

受給条件は、2020年に6カ月以上カリフォルニアに住み、現在も同州在住者であること。世帯主のみが対象で、扶養家族には受給資格はない。

夫婦で合算申告している場合は、所得額と扶養家族の有無に応じて400ドル以上1050ドル以下が支給される。個人の場合は200ドル以上700ドル以下となる。

最高額1050ドルの支給対象となるのは、所得15万ドル(約2200万ドル)以下、扶養家族のいる夫婦合算申告の家庭。同所得水準で扶養家族がいない場合は700ドルとなる。15万ドル以上の家庭にも一定額が給付されるが、50万ドル以上(個人申告の場合は25万ドル以上)は支給対象外となる。給付金は今月から来年1月までの間に配布される。州内の約1,800万世帯が支給対象とされ、約2,300万人が給付金の恩恵を受けると見られる。ちなみに2022年の州人口は、州政府の推計で3,900万人とされている。

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インフレ加速させるとの指摘も

財政黒字による余剰金を、一回限りの還付金に充てる措置は他州でも行われている。フロリダ州では生活保護を受ける子供のいる家庭に450ドルを支給する。CNBCによると、17州で「インフレ救済」給付が実施されている。

一部の専門家からは、これらの動きは一層のインフレを招くとして、懸念する声が上がっている。

米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ・インスティチュート」のシニア・フェロー、ベス・エイカー氏はブログで「インフレ環境の中でドルを配布するのは、事態を悪化させる」と主張。「無駄な努力」と記した。

ハーバード大学の経済学教授、ジェイソン・ファーマン氏はツイッターの投稿で、カリフォルニア州を「他州に対する固定為替相場制をもった中規模の開放経済」と位置付けた上で、救済金は、他州にインフレを輸出し、カリフォルニアにも部分的に現れると指摘。「個々の州の合理性が、集合的な非合理性につながる」とコメントした。

政治的思惑を指摘する声もある。

非営利団体Tax Foundationのジャレッド・ワルザック副所長は、CNBCの取材に、こうした景気刺激策は通年行われているが特に選挙の時期には急増すると指摘。「急加速するインフレで家計が圧迫される中、各州には記録的な財政黒字による余剰金がある」とし、給付金は政治的アピールの思惑を背景に、インフレと余剰金を結び付けた政策だとしたうえで、「残念ながら、経済が過熱状態にある中に現金を注入するのは、インフレを加速させるだけだ」と語った。

ワルザック氏は、長期的には減税策が好ましいと主張。一度限りの刺激策にこだわるなら、年金やレイニー・デー・ファンド(災害など非常時のために蓄積する資金)に費やす方が賢明だとも指摘した。