ブリトニー・グライナー
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違法薬物を密輸したとしてロシアで懲役9年の判決を受け、今月流刑地に移送された米女子プロバスケットボールのブリトニー・グライナー選手について、ロシア人の人権活動家が「解放される頃には別人になっている」などと懸念を示した。

人権団体「ロシア・ビハインド・バーズ」の創設者オルガ・ロマノヴァ氏は今月、グライナーさんの移送前に行われたPoliticoのインタビューで、ロシアの流刑地についてその荒廃ぶりを語った。

ロマノヴァ氏はグライナーさんがアメリカ国籍であることは流刑地で過ごすにあたって「不利」になるとし、その背景として、「ロシア政府は昔からアメリカは人類の敵だと国民を教育してきた」と、米国人への敵意が根付いているロシアの国民性を説明した。特に黒人であり、同性愛者であることで、グライナーさんが「脅威」と見られるだろうと推測。流刑地の囚人はみな過酷な長時間労働を強いられるが、グライナーさんの場合は「トイレに押し込まれたり」、「耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言を浴びせられるでしょう」と懸念を示した。

またロマノヴァ氏は、ロシアの流刑地は男子よりも女子の方がより危険だとも指摘。男子の流刑地には「行動に関する不文律」や「暗黙の権力者たち」が存在するが女子の流刑地にはそれがないため、「みな自分中心に」なり、「裏切りや虐待など何でもあり」の、いわば無法地帯になっているという。「彼女を守ろうとする人がいるとは思えません。アメリカ人には信じられないでしょうが、ロシアの流刑地には人権など存在しません。健康、尊厳、人生、全ての権利を奪われます。何もかもです」とロマノヴァ氏は語った。

グライナーさんは今年2月、ロシアで禁止されている大麻成分入りの「ハシシオイル」を持ち込んだとして拘留され、8月に違法薬物所持および密輸罪で懲役9年6カ月の判決を受けた。上訴したが棄却され、先月刑が確定した。どの流刑地に送られたかは弁護士にも知らされていないという。

国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、流刑地に着くまでには2週間から1カ月、場合によってはそれ以上かかる場合もあり、道中も「過酷で非道で尊厳を無視した扱いを受ける」という。米国務省は、流刑地は衛生環境が悪く食糧が不足している上、医療ケアも限定的で、肉体的、性的な暴力も横行していると説明している。

バイデン政権はグライナーさんの解放を求め、囚人交換を提案するなどしてロシアに働きかけを続けているが、ロシア側はこれまで提案に応じていない。米国務省は8日の声明で、米政府がグライナーさん解放に向けて新たな提案をまとめる間、現地の米大使館職員にグライナーさん含む拘束中の米国民全員への面会権を付与することをロシア側の義務として強く要請し、「ロシアで拘束中の米国民の健康と福祉を保障することは優先事項であり、我々は彼らに対する公平で透明性の高い対応を求め続ける」と述べた。

バイデン政権は今年7月、グライナーさんと、スパイ容疑で2018年からロシアに拘束されている元米海兵隊員のポール・ウィラン氏の2人を米国で拘束中のロシア人受刑者との交換を提案したが、ロシア側がこれを拒否した。4月には元米海兵隊員のトレバー・リードさんと、薬物違法取引で米国で有罪となったロシア人パイロット、コンスタンチン・ヤロシェンコ受刑者との囚人交換が成立し、解放に至っている。