バイデン氏 一般教書演説でルーズベルト「4つの自由」演説を持ち出したワケ

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バイデン大統領は7日に行った一般教書演説の冒頭、「1941年1月に、フランクリン・ルーズベルト大統領はこの連邦議会にやってきて国家に呼びかけた」と切り出し、「彼は”連邦史上、前例のない瞬間に皆さんに演説する”と語った」と説明。「ヒトラーが行進し、ヨーロッパで戦争が激化していた」時代に、「ルーズベルト大統領の目的は議会を目覚めさせ、これが普通の瞬間ではないことを国民に警告することだった」と続けた。

バイデン氏が言及したのはルーズベルト大統領が3期目に当選後、最初に行った一般教書演説で、「4つの自由」演説とも呼ばれる。

今も大統領ランキングで上位の人気を誇る第32代大統領は、国民の間で支配的だった米国の孤立主義を打破しようと、外国間の戦争が米国の安全と民主主義の脅威であることを訴え、ナチスとの戦いで兵器や物資の不足に苦しむイギリスへの支援の必要性を理解させるようと務めた。

ルーズベルト氏は冒頭、「前例のないという言葉を使ったのは、アメリカの安全保障が今日ほど外部からの深刻な脅威にさらされたことはないからだ」とした上で、「よって、一般教書を議会に提供するという憲法上の義務を負う皆様の大統領として、残念ながら、我が国と民主主義の将来と安全が、国境をはるかに超えた出来事に大きく関わっていることを報告する必要がある」と主張した。

独裁国家が勝てば、国土に物理的攻撃がもたらされる可能性があると指摘し、「だからこそ、すべてのアメリカの共和国の未来が、今日において深刻な危険にさらされている」「だからこそ、この議会への年次演説は、われわれの歴史でユニークなものなのだ」と語った。

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ルーズベルト氏は、軍備増強と議会による予算増額に加え、兵器や物資製造に十分な権限と資金を侵略国と戦闘中の国々に提供しなければならないと主張。「最も有益で直ちに必要な役割は、彼らの武器庫として機能することだ」と呼びかけた。一方、「人的資源は必要ない」と加え、資金と物的支援に限定することを誓った。

さらに、こうした友好国に対して返済ローンを組むことを推奨しないとしたほか、代金を今払えないという理由だけで、降伏しなければならないなどというつもりもないと述べ、「彼らの発注をわれわれ自身のプログラムに組み込むことを推奨する。ほぼすべての物資は、いざとなればわれわれ自身の防衛にも役立つだろう」と述べた。

演説後半には「将来の安全を確保するために、われわれは人間の本質的な4つの自由に基づく世界を期待している」とし、「表現の自由」「信仰の自由」「欠乏からの自由」「恐怖からの自由」を挙げた。

恐怖からの自由について、あらゆる国家が隣国からの侵略行為を恐れる必要がなくなるまで、世界規模での軍備削減を進めることを意味するとした。

演説から4日後、連合国側に兵器や物資を賃貸、リースすることを認める武器貸与法(Lend,Lease Act )が議会に提出され、後に圧倒的多数で通過した。

また、4つの自由の考えは、大西洋憲章に活かされたほか、死後、エレノア・ルーズベルト夫人によって世界人権宣言に組み入れられた

バイデン氏は、ルーズベルト大統領の演説に触れつつ、「今、連邦史上前例のない瞬間に直面しているのはわれわれなのだ」とし、自分の一般教書の目的も「議会を目覚めさせ、通常の瞬間ではないことを国民に警告することにある」と語った。

ただし、現在が珍しいのは「自由と民主主義が国内外で同時に攻撃にさらされていることだ」とも説明。「ヨーロッパが危険にさらされている。自由世界が危険にさらされ、われわれに損害を与えようとする者を勢いづかせている」と述べ、ウクライナへの支援継続を訴えた。「われわれはプーチンに立ち向かわなければならない。超党派の国家安全保障法案を私のもとに送って欲しい」と議員らに呼びかけた。

国内について、2021年1月6日の議事堂襲撃事件に言及。事件は民主主義にとって南北戦争以来、最大の脅威をもたらしたと語り、「脅威はまだ残っており、民主主義は守らなければならない」と主張した。大統領選で再対決がほぼ確実となったトランプ氏の名前を避けつつ「前任者とここにいる一部の者は、1月6日の真実を葬り去ろうとしているが、私はそうしないだろう」と述べ、「勝ったときだけ国を愛することはできないのだ」と厳しく非難すると、民主党議員らから大きな拍手が沸き起こった。