「敗北演説」ハリス氏と2016年ヒラリー氏を比較

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6日、カマラ・ハリス副大統領は敗北演説を行い、トランプ氏の勝利に祝福を表明するとともに支持者らの支援に感謝を示した。

5日に実施された大統領選で、トランプ前大統領が5つの激戦州(ペンシルベニア、ジョージア、ノースカロライナ、ミシガン、ウィスコンシン)を制し(残り2州はトランプ氏優勢だが未確定)、一般投票でも2004年以来初めて民主党を上回る勝利を収めた。8年前の大統領選では、同じく初の女性大統領誕生の期待を背負って出馬したヒラリー・クリントン氏(当時69)は、一般投票で上回ったが、トランプ氏にネバダ州以外の激戦州を競り負け、辛酸を舐めた。約12分間におよんだハリス氏のスピーチには、ヒラリー氏との共通点も多々見られた。

敗北受け入れ、平和な政権移譲約束も、次政権への協力姿勢に違い

ヒラリー氏は2016年の大統領選のスピーチで、支持者らの失望に同情を表明した上で、トランプ氏を「私たちの大統領」と呼び、支持者らに受け入れるよう求めた。

ヒラリー氏:「昨夜、私はドナルド・トランプ氏に祝辞を伝え、我が国のために彼と協力する用意があることを伝えました。彼がすべての国民にとって成功する大統領となることを願っています。~私はまだアメリカを信じています。これからも信じ続けます。皆さんがそう思うなら、この結果を受け入れ、未来に目を向けなければなりません。ドナルド・トランプ氏が私たちの大統領になります。私たちは彼にオープンな心とリーダーシップを発揮する機会を与える義務があります」。

ハリス氏は、結果の受け入れを促す一方で、民主主義や憲法を尊重するからだと強調した。

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ハリス氏「私たちはこの選挙結果を受け入れなければなりません。先ほど、私はトランプ次期大統領と話し、彼の勝利を祝福しました。私たちが彼と彼のチームの政権移行を助け、平和的な権力移譲を行うことも伝えました。アメリカの民主主義の原則は、選挙で負けた場合にその結果を受け入れることです。この原則こそが、民主主義を君主制や独裁から区別するものです。公職を求める者は誰でも、この原則を尊重しなければなりません。同時に、私たちの国では、大統領や政党ではなく、合衆国憲法、そして私たちの良心と神に忠誠を誓う義務があります」。

トランプ氏は2020年大統領選の敗北を認めず、投票不正説を信じた支持者らが、議事堂を襲撃する事件を引き起こした。

闘争の行方

ハリス氏は「この選挙の敗北は認めますが、この選挙運動を支えた闘いの敗北を認めるものではない」と宣言。「闘争(fight)」を多用し、自らが政治または社会運動を牽引、継続する姿勢を強調した。

ハリス氏「自由、機会、公平さ、そしてすべての人々の尊厳のための闘い。私たちの国の中心にある理想のための闘い。アメリカの最良の姿を反映する理想のための闘い。これは私が決して諦めない闘いです。アメリカ人が自分の夢や野望、願望を追求できる未来のための闘い、アメリカの女性たちが自分の身体について自由に決定を下すことができ、政府に何をすべきか指図されない未来のための闘い、私はこれらを決して諦めません」。

さらに後半では、「今こそ、自由と正義のため、そして私たち全員が一緒に築けると知っている未来のために、組織し、動員し、そして関与し続ける時です」と呼びかけた。

当時の年齢でハリス氏を10歳近く上回っていたヒラリー氏は、大義や価値観を「守る」「推進する」といった柔らかい表現を混ぜつつ、自ら戦いを継続する姿勢を控え、「闘争」は次世代にその価値を説く文脈で使用した。

ヒラリー氏「多くの皆さんは、専門的、公的、そして政治的なキャリアの始まりにいます。皆さんも成功と挫折を経験することでしょう。この敗北は痛みを伴いますが、正しいことのために闘うことは価値があると信じることを、決して止めないでください。私たちには、皆さんがこれらの闘いを今も、そしてこれからの人生においても続けていくことが必要なのです」。

若者をエンカレッジ

両者ともに締めくくりでは、女性や少女をはじめ次世代の挑戦を励ました。

ハリス氏:「重要なのは、決して諦めないことです。決して諦めてはなりません。世界をより良い場所にしようとする努力を決して止めないでください。あなたにはパワーがあります。あなたにはパワーがあるのです。誰かが”それは今まで誰もできたことがないから無理”だと言っても決して耳を貸さないでください。あなたには、世界に並外れた善をもたらす能力があります。だから、見ている皆さん、絶望しないでください。これは手をあげるときではありません、これは袖をまくり上げる時なのです」。

ヒラリー氏は、自らの政治テーマである「ガラスの天井」の比喩を用いた。

ヒラリー氏:「私たちはまだ、最も高く最も硬い天井を打ち破ることはできませんでした。しかし、いつの日か誰かがそれを成し遂げるでしょう。願わくば、私たちが今考えているよりも早くそれが実現することを願っています。そして、これを見ているすべての小さな女の子たちへ。あなたたちには価値があり、力があり、世界中のあらゆるチャンスと機会を得るに値する存在だということを決して疑ってはいけません。自分の夢を追い求め、実現する資格が十分にあるのです」。

ヒラリー氏 敗北演説の舞台裏

ヒラリー氏は2017年出版の回想録『What Happend』で、当時の心境や演説の過程を振り返っている。

それによると、スピーチライターから上がった初稿は「あまりに闘争的」で、トランプ氏のもたらす恐怖に触れた内容だったという。さらに、選挙終了後もヒラリー氏が数百万人のために「戦い続けるだろう」とされていた。

敗北を認めて去る以外に「今更議論することに意味があるのか?」と疑問を投げかけるヒラリー氏に、キャンペーンに外交政策顧問として加わっていたジェイク・サリバン氏(現安全保障担当大統領補佐官)が「過去半年間、この男がもたらす危険について語ってきたことを信じているのならば、それが本当ではなかったかのように振る舞うことはできない」と反論したという。

議論の末、より「簡潔で優雅だが、甘ったるくない」内容に書き換えるよう指示したという。その後はステージに上がるまでの逡巡や、ヒラリー氏自身による敗北の分析といった貴重な証言が記されている。

Mashup Reporter 編集部
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