ロシア国防省は11日、制服組トップのワレリー・ゲラシモフ参謀総長を、特別軍事作戦の統合軍司令官に据えると発表した。タス通信によると、これに伴い、10月に同ポストに任命されたアルマゲドン将軍こと航空宇宙軍司令官セルゲイ・スロヴィキン大将は、地上軍司令官オレグ・サリュコフ大将、ロシア軍参謀本部副長官アレクセイ・キム大佐とともに、副司令官に就任する。変更は「より広範な任務と、軍の各支部および軍務間のより緊密な調整の必要性」に関連したものとしている。

スロヴィキン氏の指揮のもと、ロシア軍は南部の要衝ヘルソン市から撤退し、その一方で民間のインフラ施設を標的にした大規模な空爆を繰り返した。同氏の就任にあたっては、傭兵組織ワグナーグループのトップ、プリゴジン氏やチェチェンの指導者カディロフ氏が、支持を表明していた。

ゲラシモフ氏の任命について、英国防省は、プーチン大統領の戦争に対するアプローチの「重要な進展」だと指摘。「ロシアが直面する状況の深刻度が増していることを示しており、戦略的目標を達成していないことを明確に認めている」との見方を示した。一方で、 「超国家主義者や軍事ブロガー」の間では、ゲラシモフ氏の戦争遂行能力に対する非難が高まっており、今回の人事を不愉快と感じているだろうとも指摘した。

交代をめぐって、政治的な理由を指摘する声も上がっている。

軍事アナリストのロブ・リー氏は、ツイッターで「スロビキンが失敗とみなされたからではないと思う」とした上で、「政治的な理由で動いた可能性が確かにある。スロヴィキンが非常に強力になり、プーチンと話す時も、ショイグやゲラシモフをバイパスしていた可能性がある」と主張した。

ニューヨークタイムズは、ゲラシモフ氏を公然と批判するプリゴジン氏を牽制するとの見方もあると報じている。

ゲラシモフ氏の統合軍司令官就任と前後して、ロシアメディア「RBC」は、情報筋の話として、中央軍管区司令官だったアレクサンドル・ラピン大佐が、陸軍参謀長に任命されたと伝えた。ラピン氏は7月、ルハンスク州の制圧に貢献したことから、プーチン大統領より「英雄」称号を授かった。しかし10月、ドネツク州の要衝リマンを奪還された後、カディロフ氏から解任を求める声が上がるなど、強硬派による不満が噴出。その後、指揮官から外されたと伝えられていた。

ワレリー・ゲラシモフとは?

タイムズによると、ゲラシモフ大将(67)は、ロシア南西部のタタールスタン共和国の首都カザン生まれ。1977年に戦車学校を卒業し、極東ロシアに派遣された。その後、次々と昇進を果たし、ソ連全域で軍務を務めた。ソ連崩壊後、第2次チェチェン紛争で軍司令官を務め、2012年の人事で、ロシア参謀本部のトップに就任した。

米、ゲラシモフ氏殺害の中止を要請

ニューヨークタイムズは昨年12月、米政府がウクライナに対して、ゲラシモフ氏の殺害を中止するよう要請していたと伝えた。

ゲラシモフ氏が4月に前線を訪問するとの情報をつかんだ米当局者は、命を狙えば米露の直接衝突に発展することを懸念し、ウクライナ側に伝えないことを決定した。しかし、ウクライナ側が情報を入手したため、それを知った当局者は、議論の末、ウクライナに攻撃中止を要請するという異例の措置をとったという。結局ウクライナは攻撃を実施し、ロシア兵が数十人が死亡したが、ゲラシモフ氏はその中に含まれていなかった。