10月、5年ぶりとなる共産党大会が開催され、3期目となる習近平氏は2時間あまりにわたってこの5年間の成果を強調した。演説内容は多岐に渡ったが、習氏は特に2つのポイントを強調した。1つは、中華民族の偉大な復興で、習氏は中国が高い経済成長を続け、経済や安全保障、技術などあらゆる分野で米国と競争していく方針を打ち出した。もう1つは台湾問題で、習氏は改めて台湾統一は必ず達成されるとし、そのためには武力行使も排除しないと警告した。異例となる3期目に突入する習氏であるが、米国との競争、そして台湾統一を最優先し、その対抗勢力に対しては頑固たる姿勢で臨んでくる。しかも、台湾統一の問題は民主主義と権威主義の戦いであり、要は米国との競争でもある。台湾有事のリスクは3期目でいっそう高まるだろう。

だが、習氏は一喜一憂できない状況にある。中国は長年高い経済成長率を維持してきたが、近年、中国の経済成長率は鈍化傾向にあり、若者たちの経済格差や少子高齢化などの社会問題が追い打ちをかけ、今後の見通しは決して明るくない。新型コロナの感染拡大以降、中国政府はそれを撤退的に抑えるべくゼロコロナ政策をあちらこちらで導入し、市民は行動の自由を奪われ、企業は経済活動を大きく制限された。日本企業でもビジネスが上手くいかなくなり、中国から規模縮小を図る企業もみられる。また、最近では欧州の大手自動車メーカーであるステランティスが中国での自動車生産を打ち切る可能性を示した。

近年中国に進出する欧米自動車メーカーは中国国内メーカーに市場シェアを奪われつつあり、人件費高騰や米中貿易摩擦などの影響もあり、中国市場の価値が下がりつつある。こういった状況が続けば、外国企業の撤退や規模縮小などが進む可能性があるが、経済の安定が必須な習指導部にとっては大きな痛手となる。

そして、習氏が恐れる出来事が共産党大会を目前にした10月13日にあった。北京市北西部にある四通橋に、“独裁者習近平は辞めろ、選挙を実施ろ”、“ロックダウンではなく自由を、嘘ではなく尊厳を、文革ではなく改革を、PCR検査ではなく食糧を”などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられる動画がネット上に拡散した。共産党大会直前で警備が厳重に敷かれる中、こういった抗議行動が明るみになるのは異例だ。3期目に入る習氏だが、対外的に強い姿勢を示す一方、今後習氏にとって最大の課題は経済と国民になるかも知れない。

■筆者プロフィール :カテナチオ 世界情勢に詳しく、特に米中やロシア、インド太平洋や中東の外交安全保障に詳しい。学会や海外シンクタンクなどで幅広く活躍する。