NY銃乱射事件につらなる極右暴力の連鎖 「国内テロ」では読み解けないニュースの見方(後編)

白人至上主義者

ニュージーランド・クライストチャーチにあるイスラム教礼拝所を襲ったタラント被告の事件以降、2019年には同様の事件が米国や欧米各国で続くことになった。2019年4月には、カリフォルニア州サンディエゴ郊外のパウウェイ市にあるシナゴーク(ユダヤ教礼拝所)で、当時19歳の白人の男が銃を乱射し、1人が死亡、3人が負傷した。男はサンディエゴに住むジョン・アーネスト(John Earnest)被告で、シナゴークに押し入った際にユダヤ教徒を中傷する言葉を叫びながら銃を乱射した。アーネスト被告も「8chan」に自らのマニフェストに投稿し、「タラントのマニフェストを少し読んだだけだが彼は正しい、他の人たちも読むべきだ」とタラント被告を賞賛した。

(前編)NY銃乱射事件につらなる極右暴力の連鎖 「国内テロ」では読み解けないニュースの見方

8月には、メキシコとの国境に近いテキサス州エルパソにあるショッピングモールで白人の男が銃を無差別に乱射し、22人が犠牲となった。実行したのは当時21歳のパトリック・クルシウス(Patrick Crusius)被告で、エルパソから約1000キロも離れたダラス近郊から事件を起こすためにやってきた。クルシウス被告も、事件直前に自身のマニフェストをタラント被告やアーネスト被告と同じ「8chan」に投稿し、ヒスパニック系移民の人口増加をヒスパニックによるテキサスへの侵略と位置付け、タラント被告から強い影響を受けたと賞賛した。犠牲者22人のうち8人がメキシコ人でヒスパニック系を狙ったことは間違いない。

また、エルパソの事件の一週間後、今度はノルウェー・オスロ近郊のバールム(Baerum)にあるモスク「ヌール・イスラム・センター」で白人の男が発砲し、1人が負傷した。男はモスク内でコーランを読んでいた信者の男性に取り押さえられ、その後警察に逮捕されたが、逮捕されたのは当時21歳のフィリップ・マンスハウス(Philip Manshaus)被告で、この男も犯行の数時間前に「Endchan」(エルパソの事件後、8chanはシャットダウンとなった)と呼ばれるネット掲示板にマニフェストを投稿し、「私の出番だ、私は聖なるタラントから抜擢された」などとタラント被告に言及し、パウウェイのアーネスト被告をタラントの一番弟子(first disciple)と呼び、エルパソのクルシウス被告について、彼は彼の国を取り戻したと賞賛した。

さらに、2019年10月、ドイツ東部の都市ハレ(Halle)にあるシナゴーグ付近で白人の男が銃を無差別に乱射し、2人が死亡、2人が負傷した。この男はドイツ人の27歳のステファン・バリエット(Stephan Balliet)被告で、反ユダヤ主義を抱き、シナゴーグの中に入って銃を乱射しようとしたが入れず、近隣で女性1人とケバブ店で男性1人を射殺した。前日夜からユダヤ教の祭日にあたるヨム・キプル(Yom Kippur)が始まっており、バリエット容疑者はそのタイミングを狙って犯行に及んだとみられる。また、この男は事件の1週間前に英語でマニフェストをネット上に投稿するだけでなく、ゲーム配信のプラットフォーム「Twitch」を通じて35分のライブ配信を行っていた。ライブ配信の冒頭で、バリエット容疑者は英語で挨拶し、ホロコーストはなかったと言及し、反ユダヤ、反フェミニズム的な考えを示した。同容疑者は、マニフェストの中でタラント被告などに言及しなかったが、白人優位の排斥主義的な考えを示し、また、事件前にマニフェストを投稿し、犯行の様子をライブ配信した。そして、ドイツ人のバリエット容疑者はマニフェストやライブ配信で英語を使用したという事実からは、諸外国にいる同調者に向かって呼び掛けていたことが想像される。国内向けに呼び掛けるならばドイツ語を使っていたはずだ。

以上のようにみてくると、白人至上主義者による極右テロで懸念されるのはその国際性だけでない。無差別性連続性も怖いところだ。Great replacement theory(偉大なる交代論)とは一種の陰謀論で、簡単に説明すると、「近年欧米世界ではイスラム教徒やユダヤ教徒、黒人やアジア系、ヒスパニックなど非白人の人口が増え、白人の優勢が失われ、白人の世界が非白人に侵略させている。よって、白人の世界を取り戻す義務が我々にはあり、そのためには暴力も厭わない」という考えだが、これまでの事件を振り返ると、実行犯たちの標的はイスラム教徒(タラント、マンスハウス)、ユダヤ教徒(アーネスト、バリエット)、ヒスパニック(クルシウス)、黒人(ジェンドロン)、移民難民に寛容なリベラル主義者(ブレイビク)などさまざまであるが、非白人(またはその同調者)によって白人の世界が脅されているという部分では共通しており、標的は非白人(またはその同調者)という極めて標的の範囲が広い。正に、標的の無差別性という問題が内在する。

そして、連続性だが、バッファローの事件を含め、被告たちは多くの場合、過去の実行犯たちを名指しで称賛した。また、事件前にマニフェストをネット上に公開する、ネット上でライブ配信するという所も過去の容疑者と共通しており、一連の事件には間には連続性がある。正に、模倣犯とも言えるかも知れないが、実行犯たちは自らに続くよう次の候補者たちに間接的に呼び掛けており、今後も同様のテロ事件が続くことが懸念される。

近年繰り返される暴力的白人至上主義者によるテロ事件には、国際性、無差別性、連続性という悪い特色がある。こういう過去の事件に照らし、テロ・過激主義の研究からみた場合、バッファローの事件は1つの通過点でしかないのかも知れない。