米、ウクライナ疑惑 内部告発書が公開。トランプ大統領は信頼性を批判

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トランプ大統領がウクライナの指導者に、2020年大統領選のライバル候補の調査をするよう圧力をかけた疑惑を巡り、下院情報特別委員会は26日、情報機関の当局者による内部告発書を公開した。

告発者は、2020年大統領選について、大統領が外国の介入を求めるために権力を乱用していると指摘。自身は大半の出来事に関する直接の目撃者ではないとし、告発内容の多くは、複数の政府関係者から受け取った情報に基づくと説明している。また一連の取り組みには、ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が中心人物として関わっているほか、ウィリアム・バー司法長官も関係していると記述した。

告発書に対し、トランプ大統領は27日「いわゆる内部告発者は、告発者でもなんでもない」とツイート。「受け売りの情報」は「情報漏洩者」または「党派的な工作員」が与えたもの、と情報の信頼性を批判した。

内部告発書

7月25日 電話協議

告発者は、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領の電話会談について、社交的な会話の後、大統領が電話を「個人的な利害を推し進めるために使用した」と、複数の政府関係者が話したと記述。2020年の再選を助けるよう、ウクライナ指導者に圧力をかけたと指摘し、トランプ氏が、ジョー・バイデン前副大統領と息子ハンター氏に関する捜査を求めたほか、2016年大統領選でハッキングされた民主党全国委員会(DNC)のサーバーに関連する調査を要求したことなどを詳述した。

なおDNCサーバーのハッキングは、2016年に、サイバーセキュリティー会社のクラウドストライクが分析を行ない、FBIに報告を行なった。同社はロシアの情報機関に関連する人物のハッキングへの関わりを特定。問題は、その後のロシア疑惑捜査へとつながっていった。トランプ氏はこれまで、FBIが独自にサーバーを分析しなかったとして、ロシア捜査の発端に不正があるという見方を示してきた。また度々、サーバーの保管場所について疑問を呈している。ホワイトハウスが前日に公開した通話記録によると、トランプ氏は「(サーバーが)ウクライナにあるといわれている」とゼレンスキー氏に伝え、捜査を求める意向を伝えている。

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電話の会話は、少なくとも数十名のホワイトハウス関係者が聞いており、これら関係者が内容について懸念を表明したという。

ホワイトハウスが通話記録のアクセスを制限

電話の数日後、告発者は、ホワイトハウス上級職員が通話記録を「封じ込めた」ことを、政府関係者を通じて知った。ホワイトハウス弁護士が、電子トランスクリプトをコンピュータシステムから取り除くよう指示し、代わりに、トランスクリプトは機密情報を扱う隔離された電子システムにロードされたと説明を受けたという。

ジュリアーニ氏が電話のフォローアップ

告発書によると、電話の翌日にウクライナの首都キエフを訪れたカート・ヴォルカーウクライナ問題特別代表が、EUのゴードン・ソンドランド米国大使とともに、ゼレンスキー大統領や複数の政治家と会合を行った。政府関係者は告発者に対し、この会合ではトランプ氏の要求にいかにあたるか、助言が提供されたと説明した。8月2日には、ジュリアーニ氏がマドリッドでゼレンスキー大統領のアドバイザーと会合を持った。政府関係者は会合の性質を、電話に対する「直接的なフォローアップ」であると述べたという。

告発書ではこのほか、ジュリアーニ氏がウクライナの政権交代前から、当時の検事総長と会合を重ねたことや、ヴォルカー氏とソンドランド氏が同国指導者らと会い、米国の公式なメッセージに加え、ジュリアーニ氏のメッセージに対する理解や返答を助けたなど、7月の電話に至るまでの動向が記述された。

複数の政府関係者は告発者に対し、ウクライナの指導者らがこの間、両首脳間の会談や電話は「ジュリアーニ氏と検事総長が公にしている問題について、ゼレンスキー氏が実行する意欲を示すかによって決まる」と信じさせられた、と話した。

ウクライナは米国の支援停止の可能性を知っていた

告発書によると、ウクライナへの軍事支援の保留について、大統領からすべての支援を停止するよう指示があったとして、行政予算管理局から7月18日に関係機関に通達があった。行政予算管理局および安全保障評議会のスタッフはいずれも、停止の理由を知らなかった。8月初旬に告発者は、複数のウクライナの当局者が援助停止の可能性を知っていることを、政府関係者から告げられた。ウクライナがいつどのように知ったのかは不明だとしている。