ウォール・ストリート・ジャーナルが今月17日に報じた2003年にジェフリー・エプスタインの50歳の誕生日に送ったとされるトランプの手紙。そこに記された謎めいた文言は何を意味しているのか。
報道によれば、手紙はタイプライターで打たれた文面に、手書きと見られる裸の女性の輪郭が描かれていた。胸を示す2つの弧、腰の下にはくねくねと陰毛を模したように「Donald」の署名も添えられている。文章は架空の対話形式で綴られており、「ジェフリー、僕たちには共通点があるんだ」「謎というものは決して歳を取らない、そう思わないか」などと語るトランプに、エプスタインが「実のところ、前回君に会った時には、私にははっきりしていた」と応じる。締めくくりには、「友というのは素晴らしいものだ。誕生日おめでとう。毎日がまた素晴らしい秘密の日でありますように」と記されていた。
『Fire and Fury』などトランプ暴露本でお馴染みの作家マイケル・ウォルフによると、秘密同盟のような会話は、特定の女性を指したものだとみられる。
26日配信の米ニュースサイト『デイリー・ビースト』のポッドキャストにゲスト出演したウォルフは、「彼が言及しているのは、92年または93年ごろに彼らが共有していたガールフレンドのことだと思う」と説明。「未成年ではなかったが、二人の間を行ったり来たりしていた、文字通りシェアされていた女性がいた。当時、彼らがこの特定の女性を共有していたことはオープンだった。二人ともそれを理解していた」と語った。
同氏が以前語ったところによると、トランプとエプスタインは1980年代後半から2004年頃まで友人関係にあった。エプスタインも自ら、2017年のウォルフとのインタビューで「ドナルドと10年間の親友だった」と認めている。
二人は親友であると同時に、「女と金、地位」を競い合うライバルでもあり、これを裏付けるような告発もある。
昨年10月、1993年にトランプによる性的嫌がらせを告発したスポーツイラストレイティッドの元モデル、ステイシー・ウィリアムズ氏は、「ある種の病的な賭け、または歪んだゲーム」の対象にされたと語っている。
エプスタインと当時交際していというウィリアムズ氏は、エプスタインとともにトランプを訪れた際、トランプから胸や腰、尻など体中を触られるなどの性的嫌がらせを受けたという。「二人の男は互いに微笑み合い、会話を続けていた」と異常な様子を暴露している。
ウォルフはまた、今回のポッドキャストで、政権関係者の話として、ホワイトハウスはWSJの報道をギレーヌ・マクスウェル側からの「警告」とみなしていると語った。
エプスタインの性犯罪に関与したとして、未成年者に対する性的人身売買罪を含む5つの罪で有罪評決を受けたマクスウェルは、現在フロリダ州タラハシーの連邦刑務所で20年の刑に服している。
司法省によるエプスタイン資料の非開示決定をめぐって噴出した不満は現在、事件の真相を最もよく知るであろうマクスウェルの議会召喚を求める声に発展している。トランプ政権下の司法省はそれを先回りするかのような動きをみせている。
先週、トッド・ブランチ司法副長官は服役中のマクスウェルと急遽面会を果たした。2日間の面会を終えたブランチは、会話の内容を明らかにしておらず、「適切な時期に、我々が得た情報に関する追加情報を共有する予定」と述べるにとどまった。ブランチは、昨年トランプに有罪判決が下った「口止め料」裁判でトランプの弁護士を務めるなど、トランプの個人弁護士から司法省ナンバー２に抜擢された人物。第一線の検察官ではなくこれほどの幹部が受刑者と面会するのは異例とされる。ネットを中心に、トランプが恩赦や減刑を餌にマクスウェルに口止め圧力をかけるのではないかとの疑惑も浮上している。
一方のトランプ本人は、前述の誕生日レターについて「知らぬ存ぜず」の一点張り。25日、スコットランド行きを前に行った会見では、「君たちはビル・クリントンについても話すべきだ。あの島（エプスタインがヴァージン諸島に所有していた島）に28回も行っているのだ。私はあの島には一度も行っていない」と矛先を交わそうと試み、「何を言っているのか、私には全く分からない。誰かが手紙を書いて私の名前を使った可能性もある。そういうことは何度も起こっているのだ」と新説を持ち出している。
目下のところ、エプスタイン事件の真相と情報の完全公開を求める声は衰えていない。司法省による捜査関連資料の非公開決定を前に、トランプは自分の名前が資料中に複数あることを知らされていたと報じられるなど、ネガティブ報道も相次いでいる。否定すればすればするほど深まる疑念。トランプは有効な出口戦略を見出せていないようだ。