南北戦争は交渉で回避できた?トランプ氏の発言に専門家「小学生のたわごと」

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トランプ前大統領は、党員集会まで9日と迫ったアイオワ州で行った選挙演説で、南北戦争は「交渉」によって避けられた可能性があると主張。リンカーン大統領は他にやりようがあったとの考えを示唆した。

トランプ氏は「南北戦争は目を見張るもので、非常に恐ろしいものだった……とてもたくさんの誤りがあった」とした上で、「交渉できたことがあったと思う。本当にたくさんの人々が死んだ。ご存じの通り大惨事だった」と語った

続けて「悪質な戦争だった」とも述べ、「エイブラハム・リンカーンがもし交渉していれば、君たちはエイブラハム・リンカーンが何者なのかすらわからないだろう」と加えた。

その後、自分が大統領であれば、ロシアのプーチン大統領にウクライナ侵攻を思いとどまらせることができた、とこれまでの主張を繰り返した。

南北戦争は最近、共和党予備選でホットな話題に浮上しつつある。ライバル候補のニッキー・ヘイリー氏は先月末、有権者から南北戦争を引き起こした原因について聞かれた際、奴隷制に言及するのを避けたとして非難にさらされた。

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トランプ氏も別の集会で、ヘイリー氏の発言に言及。「奴隷制度が明らかな答えで、彼女はただしゃべっているだけで、何を言っているのか誰もわからなかった。三段落分のばかげたことを話していただけ」と批判に加わった。

62万人が死亡したとされる戦争が交渉で回避できたとする発言に、専門家から批判の声が上がった。

イェール大学の歴史学教授デイビッド・ブライト氏は、ワシントンポスト紙の取材に「小学生のたわごと」と一蹴。「歴史的無知」と酷評した。

アメリカ歴史協会のエグゼクティブ・ディレクター、ジェームズ・グロスマン氏は同紙に、南部諸州は、逃亡奴隷の問題をめぐって交渉に積極的ではなかったと指摘。脱退の宣言には、奴隷制を維持するために連合を離脱し、それは北部州の多くが逃亡奴隷の返還を拒否しているためだと明確に述べられていると指摘。「交渉できることではなかった」と述べた。

議事堂襲撃事件をめぐって厳しいトランプ批判を展開した後、2022年中間選挙で敗退したリズ・チェイニー氏(共和党 ワイオミング)は、X(旧ツイッター)に「南北戦争のどの部分が交渉可能だったのか?」と投稿。「奴隷制か?離脱の部分か?」と続け、「トランプを支持しているリンカーンの党である共和党議員に質問だが、どうしてこれを擁護できるのか?」と疑問を呈した。