住宅価格の高騰で、アメリカではマイホームの夢がどんどん遠ざかっている。
そんな「住宅アフォーダブル危機」の解決策として、トランプ政権が検討している”50年住宅ローン”導入に対し、ネット上では支持政党を問わず多くの批判が寄せられている。
米連邦住宅金融局のパルト局長は9日にXで「トランプ大統領のおかげで、50年ローンの開発に取り組んでいる」と発表し、「これは状況を大きく変える画期的なものだ」と胸をはった。
投稿にはトランプ本人がTruth Socialに上げたミーム画像も添付されている。
フランクリン・ルーズベルト元大統領とトランプの写真が並び、それぞれに「30年住宅ローン」「50年住宅ローン」と書かれたものだ。
最新の全米リアルター協会のデータによれば、初めて住宅を購入する人の中央値年齢は40歳と過去最高に達した。Fortune誌によると、これは昨年の38歳、2022年の36歳、2020年の33歳から着実に上昇している。さらに、全住宅購入者に占める初購入者の割合は過去最低の21%で、2007年以降で半減している。
同協会の幹部は、住宅所有が世代を超えてアメリカ人の資産形成の基盤であり「アメリカンドリーム」の核であると強調。住宅購入の遅れが約15万ドルの資産形成のチャンスを失わせていると警告し、住宅供給不足への政策的対応を強く求めている。
このような背景の中、浮上したトランプ政権の50年住宅ローン。不動産業出身の大統領によるこの案には賛成の声がほとんどなく、左右を問わず批判が広がっている。
このところトランプ批判に転じているマージョリー・テーラー・グリーン下院議員(共和党 ジョージア州)はXで、「住宅価格高騰問題の解決策としての50年ローン導入には反対だ」ときっぱり。「銀行、住宅ローン会社、住宅建設業者を利するだけで、人々は長年にわたってはるかに多くの利息を払い続け、住宅ローンを完済する前に死んでしまう。生涯借金漬けになるだけだ!」と批判した。
また、保守系コメンテーターのマット・ウォルシュも「つまり、あなたの家は死ぬまでどころか死後も銀行の所有物になるということだ。50年ローンなんて必要ない」と反発。不法移民問題に注力すべきと付け加えた。
一方、反トランプ系ポッドキャストMeidasTouchは、「トランプと側近は50年ローンを推進し、今回の状況は2008年の住宅ローン危機がまだマシに思えるほど危険だ」と警告した。
このほか、「ウォール街の借金奴隷になるために投票したわけではない」といった批判、大手機関投資家による住宅買い占めを阻止すべきとする声も多く見られる。
なお、米国の住宅価格の中央値50万ドルの物件の購入に金利6%のローンを組んだ場合、50年ローンの総利息額は30年ローン(58万ドル)のおよそ倍に達する。
ただし金利が一定とは限らない。南カリフォルニア大学のリチャード・グリーン教授はLinkedInの投稿で、「住宅ローンの返済期間を30年から50年に延長すれば、月々の返済額は確かに減るだろう」としつつも、長期ローンの金利は短期ローンと同じにはならないと指摘。「同時に、借り手は自己資産の蓄積を大幅に先延ばしすることになる」と加え、反対の姿勢を強調した。
