エリザベス女王の死で英連邦を中心に世界が悲しむ中、今月27日には安倍元総理の国葬が行われる。国葬には依然として国民の6割以上が反対し、岸田政権も納得する説明をしていない。このような中行われる国葬は、今後の岸田政権の命運を分けるだけでなく、今後の日米関係、ひいては国際社会の日本のイメージに繋がる一大行事となる。

まず、上述のとおり、国葬には多くの国民が反対している。物価高や経済格差も深刻化する中、1人の死のために16億6,000万もの税金が使われることに納得がつくだろうか。この件について、岸田総理は、「民主主義の根幹たる選挙運動中の非業の死であり、我が国は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく」との認識を示し、費用についても「過去のさまざまな行事と同水準であり問題はない」との見方を示している。

しかし、国葬ではテロなどを警戒した厳重な警備が敷かれ、仮に奈良の模倣犯が現れ、国会議員が刺傷されるなどの事件が起これば、岸田政権の支持率低下が避けられないだけでなく、そもそも政権運営ができなくなる恐れがあろう。反対の中での強行で事件が起これば、反岸田の声が一気に盛り上がることは想像に難くない。

それ以上に懸念されるのが国際社会での日本の立ち位置だ。国葬にはハリス副大統領やオバマ元大統領など各国の要人が参加する予定だが、空港からホテル、ホテルから開催場所の日本武道館までの警備など、当日は交通網がかなり混乱することになる。警察も失敗は許されないとしてかなりピリピリした雰囲気の中で警備をすることになる。そんな状況は、テロリストにとっては絶好の機会となる。仮に、奈良の事件の模倣犯が外国要人を狙ったテロ事件などを起こせば、世界からの日本警察への信頼は失墜するだけでなく、日米関係をはじめ諸外国からの日本のイメージ悪化を招く。

周知のとおり、ウクライナ侵攻や台湾有事など、日本周辺で中国やロシアの敵対的動きが顕著になっており、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。要は、それだけ日本にとって米国の重要度数が高まっており、米国の協力なしに日本の安全保障は守れない。そんな中、米国要人を狙った事件などが発生すれば、日米関係、日米同盟の信頼は低下し、それによって中国やロシアの動きがいっそう活発化する恐れがある。国際政治とはそういうものだ。今回の国葬には以上のようなリスクが内在している。

■筆者 カテナチオ:世界情勢に詳しく、特に米中やロシア、インド太平洋や中東の外交安全保障に精通している。現在、学会や海外シンクタンクなどで幅広く活躍している。