サンフランシスコの食料品店「ホールフーズ」治安悪化で一時閉鎖、従業員の安全確保を理由に

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サンフランシスコにある大手食料品店「ホールフーズ」が、従業員の安全確保を理由に、一時閉鎖したことがわかった。

閉鎖したのは、ダウンタウンのマーケットストリートと8ストリートにあるトリニティ店で、昨年3月にオープンしたばかりだった。付近には、アジア美術館やSFMOMA(サンフランシスコ近代美術館)などがある。家具やインテリア用品を販売するIKEAが、近々オープンを控えているという。

ホールフーズの広報担当者は、地元テレビ局KTVUに声明で「チームメンバーの安全を確保するため」と閉鎖の理由を説明。従業員は別の店舗に振り替えられ、雇用は維持されるという。

同地区の行政官マット・ドーシー氏はSNSで、同店はこれまでに「薬物に関連した小売店の盗難、薬物市場への隣接、それらに関連する安全問題」に直面してきたと指摘。閉店に「非常に落胆した」と述べつつも「驚くべきことではない」と所感を投稿した。治安悪化の理由の一つとして、警官不足の問題を挙げている。

KTVUによると、トリニティ店の前には「テンダーロインセンター」(薬物使用者が必要とするサービスを提供し、過剰摂取による死亡を削減するための施設)が設けられていたが、5カ月前に閉鎖したという。

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サンフランシスコ・スタンダードは、パンミック以降、リモートワークの普及で街の客足が減少し、多くの中小企業が倒産したと報じている。さらに、極度の貧困や路上生活を送る精神疾患者の問題も、顕在化したという。

サンフランシスコ市は、8億ドルの財政赤字に達する見込みで、マイナスの財政的影響が連鎖する「破滅のループ」の恐怖が広がっているとしている。

IT大手の幹部が殺害される事件も

先週4日には、個人間の送金アプリ「Cash App」の開発者で、現在は仮想通貨関連企業「モバイルコイン」で最高プロダクト責任者を務めていたボブ・リーさん(43)が、サンフランシスコの路上で刺され、死亡した。現在、殺人事件として捜査が進められている。

リーさんは最近、サンフランシスコの治安が悪化したため、フロリダ州のマイアミに転居ししたばかりだった。友人は、リーさんは仕事でサンフランシスコに戻っており、1日余分に滞在した日に殺害されたと語っている。

ツイッターやテスラのCEO、イーロン・マスク氏は事件に関して「非常に残念だ。知人でひどい暴行を受けた人がたくさんいる」とツイート。同市の暴力犯罪について「加害者が捕まったとしても、すぐに解放されることが多い」と刑事司法制度の問題に言及した。