プーチン大統領 クーデターで殺害される可能性、英軍事専門家

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ロシア軍将校の間で、ウクライナ侵攻の失態をめぐってプーチン大統領への怒りが増しているといい、専門家からは、クーデターが起きてプーチン氏が殺害される可能性を指摘する声が上がっている。

侵攻開始から100日以上が経過する中、ロシア軍は当初攻撃目標としていたキーフを諦め、現在は東部ドンバス地域に戦力を集中している。ロシア国防省は兵士の死者数を1351人としているが、一部では、3万人とも推定されている。西側からの武器支援を受けたウクライナ兵によって破壊された戦車や航空機は数千台に上るとされ、4月にはロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が、ウクライナ軍が発射した巡航ミサイルで撃沈されたとも伝えられた。

キングス・カレッジ・ロンドンで軍事および安全保障を研究するロバート・ソーントン教授は、英紙サンのインタビューで、軍将校らはしびれを切らしており、政権交代を望んでいるとの見方を示した。

ソーントン氏によると、ロシア連邦保安局(FSB)も、プーチン氏がウクライナに「手ぬるい」ことから、権力の座を外されるべきだと考えているという。

その場合、プーチン氏追放に最適な組織はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)であり、ウクライナ東部で敗退することがあれば、すぐにでも実行に移す可能性があるという。クーデターを実行に移す場合「GRUにさせるだろう、過去数週間で彼らに与えられる権限が増している」と分析を示した。

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追放に際して、少数の幹部がプーチン氏に最後通牒を突きつけるだろうと指摘。大統領室を去るよう要求するか、殺害する可能性もあると語った。

ソーントン氏はまた、クーデターが起きた場合、国民に対しては「テレビでプーチンの健康状態が悪化しているので、新指導者を迎えた」「軍事作戦による心労が祟って心臓発作を起こした」といった虚偽の説明がなされ、真相は隠蔽されるだろうと主張。これらはソビエト時代にブレジネフ書記長や、他の共産党指導者の身に実際に起きたことだと加えた。

プーチン失脚はマイナス?

ソーントン氏は、クーデターが起きた場合、後継者の一人と目されている”超国家主義者”のアレクサンドル・ボルトニコフFSB長官が大統領に就任するだろうとした上で、政権交代が戦闘の収束につながることはないとの見方を示した。

「ロシア国民はナチスに対する戦争だと説明されている。後継者が誰であろうと、突然やめよう、ウクライナから撤退するとは言えない」と述べ、ナチスに敗北した指導者が政権を運営することは不可能だと語った。

それどころか「ロシア軍が本気であることを示すために、戦術核兵器の使用に踏み切ることを懸念している」と話し、「小都市が攻撃されるかもしれない」と語った。

またプーチン氏が政権に止まる場合でさえ、強硬派が介入すれば「Udar」ドクトリン(ロシア語で、巨大な衝撃)のメッセージを発するために、核攻撃を行う可能性があると主張。いずれにせよ、両国が戦争から抜け出す容易な道はないと語った。