米で数千機のドローンを制御するシステム案を募集、専門家は大量殺戮兵器に転用される可能性に懸念

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米国防総省では現在、何千機もの自立型ドローンの大群を指揮・統制するシステムの提案を募集している。

プログラムは「Autonomous Multi-Domain Adaptive Swarms-of-Swarms(AMASS)」と呼ばれ、国防高等研究計画局(DARPA)が主導する。

昨年11月に公表された資料によると、敵によって軍の侵入や作戦を展開する能力が奪われる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」と呼ばれる環境を想定しており、陸海空さまざまなタイプのドローンを動的に指揮・制御する技術分野に関する革新的な提案を求めているとしている。

A2/ADについて「高度な防空、間接射撃、精密兵器、情報、監視、偵察能力」が備えられ、「統合軍と連合軍の作戦が著しく制限される」環境だと説明。現状、さまざまなドローンを使った「無人プラットフォーム」は「有人プラットフォーム」の代替になり得るが、頻繁な通信や常時通信を必要とするため、A2/AD環境で自立して機能するための大規模かつ動的な自律性を実現するに至っていないとしている。

AMASSプログラムの目標については「敵のA2/AD能力を低下させたり、打ち負かしたりする」ために、数千機の自律型ドローンを「利用する任務を計画し、実行する能力」を開発することだと説明している。

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敵国の具体的な言及はないが、米政治サイトポリティコは、台湾有事での使用を想定したものだろうと指摘した。米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」のアドバイザー、サミュエル・ベンデット氏は同サイトの取材に「DARPAと国防総省が、中国と技術競争をしていることを考えれば、これに取り組んでいることに驚きはない」と話したという。

こうした開発の行く末が、人間のコントロールの及ばない戦争に発展する危険を懸念する声も上がっている。

デイリーメールによると、ジョージ・メイソン大学(バージニア州)の政策研究員、ザカリー・カレンボーン氏は「理論上AMASSは、実際に敵の防衛を破壊する他のプラットフォームの支援として、電波妨害や非キネティックな攻撃をしかけるというまったく非致死的なものになり得る」と考えられているが、「そうは思わない」と主張。また、国防総省は基本方針で、自立型兵器の設計は「指揮官やオペレーターが武力行使について適切なレベルの人間の判断を下せる」ものとしているが、カレンボーン氏は、ドローンの群れが大きくなれば、「人間が判断を管理することは事実上不可能になるだろう」と予測を示した。

先述のポリティコは、専門家らの見解として、技術がテログループやAI法のない国家など、誤った手に渡れば、大量破壊兵器に使われる危険があると警告。それぞれが独立して行動するドローンの集団ではなく、群れが共にコミュニケートするため、問題が生じた場合、大惨事となるリスクがはるかに高まると指摘した。