米国防情報局(DIA)は、Palantir Technologiesから異議申し立てを受けていた軍事インテリジェンスシステム「ASTRA」の調達計画を撤回した。米複数メディアが報じた。
ASTRAは、世界規模の軍事作戦を支えるAI活用型の情報分析システムとされる。DIAは当初、このシステムを独自開発する方針だったが、Palantirは、既存の商用ソフトウェアで対応可能な機能を政府がゼロから開発するのは連邦調達規則に違反しているとして、政府監査院(GAO)にプロテストを提出した。
DIAは一度是正措置を講じたものの、Palantirはその内容が不十分だとして7月下旬に追加のプロテストを実施。その後、DIAは調達そのものを撤回した。
今回の撤回は、Palantirの主張が全面的に認められたことを意味するわけではない。しかし、防衛調達の設計そのものに対し、同社が無視できない影響力を持つ存在になっていることを改めて示した。
「調達ルールを動かす」Palantirの戦略
Palantirが調達計画に異議を唱えたのは今回が初めてではない。 同社は長らく、大手防衛企業(”primes”)中心のコストプラス契約が商用ソフトウェア企業を事実上締め出すとして、調達慣行を批判してきた。
その象徴が2016年の陸軍との訴訟だ。 当時、陸軍は次世代情報システム「DCGS-A」の調達で、システム全体を統合するリードインテグレーターを一社選定する方式を採用した。Palantirは、この仕様では自社の商用製品「Gotham」が事実上排除されるとして、米連邦請求裁判所に提訴した。 同社は、陸軍が1994年制定の連邦調達合理化法(FASA)が求める市場調査を十分に実施せず、「商用製品で代替可能か」という検討を怠ったと主張。2016年10月、裁判所はこの主張を認め、陸軍に市場調査のやり直しを命じた。
同判決は、民間テクノロジー企業の参入障壁を下げ、Palantirにその後の大型契約締結への道筋を整えた。
Palantirの政府事業は、この数年で急速に拡大した。 連邦政府との契約総額は累計約47億ドルに達し、契約先は当初の国防総省や司法省から現在では9省庁へと広がっている。契約額の約59%を国防総省が占める一方、国土安全保障省、保健福祉省、財務省、農務省などでも導入が進む。 その広がりを象徴するのがICE(移民・関税執行局)とUSDA(農務省)だ。 ICEでは2011年以来、国土安全保障捜査局(HSI)向けケース管理システム「FALCON/ICM」を提供し続け、累計契約額は4億3,000万ドルを超える。6月に発注された約4,600万ドルの契約も形式上は「完全競争」とされながら、「Only One Source(唯一の供給源)」と説明されており、既存システムとの互換性やデータ移行コストが事実上の参入障壁となっている。 USDAでも、農地管理システムやSNAP(フードスタンプ)関連システムなどへの採用が進み、累計契約額は約1億4,700万ドルに達した。 戦場でのデータ統合から始まったPalantirの技術は、移民執行、税務分析、公衆衛生、農地管理、食料支援制度の運営へと適用範囲を広げている。
今回のASTRA撤回は、Palantirが調達ルールそのものに影響を及ぼす交渉力を持つ存在であることを改めて示した。
もっとも、今回の「撤回」は最終的な勝利を意味しない。GAOプロテストで調達が撤回された場合、発注機関は通常、条件を見直した上で再公告するのが一般的だ。株価の反応も一様ではなかった。7月24日は寄り付き前の時間外取引で前日終値比約1%上昇したものの、終値では122.92ドルと前日(123.37ドル)を下回り、上げ幅を維持できなかった。





