ニューヨークで静かに増える「顔認証」

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マンハッタンの老舗の食料品チェーン「フェアウェイ・マーケット」が、顔認証システムを導入したという。ニューヨークポスト紙が伝えた。

導入が確認されたのはアッパーウエストサイドにある店舗で、同社は「ここ数年で劇的に増加した業界全体の問題である店舗犯罪を減少させる助けになっている」と効果を説明している。

店の入り口には、顧客の「生体認証情報」を「収集、保持、変換、保存、共有」すると注意書きがあるが、利用客の一部からは、プライバシーの侵害や不快感を示す声もあがっているという。

ニューヨーク市では2021年に、顔認証システムをはじめとする生体認証情報を収集する商業施設や小売業者に対して、入店前に平易かつ明確な言葉で告知を義務づける法律が成立。2022年1月に施行された。

顔認証システム使用の告知サイン
NY市が提供する告知用テンプレート

昨年の小売を狙った万引きや強盗件数は6万3,000件を超え、過去最高数を記録。前年から45%増加した。

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警察出身で犯罪対策を重視するニューヨーク市のエリック・アダムス市長は、今月6日、「全ての店舗に対し、マスクを外さない顧客の入店を許可しないよう呼びかけている」と明かし、「万引きや重罪を犯した人物を特定するために、今入手できるテクノロジーを活用しなければならない」と説明した。

こうした背景から、スーパーやドラッグストアなどを中心に、顔認証ソフトや人工知能、通路を巡回するロボットを使用して、犯罪を抑制する動きが活発化しつつある。

一方、新技術の使用をめぐっては、訴訟に発展するケースも起きている。

今週、ニューヨークの連邦裁判所に、アマゾン社に対する集団訴訟が提起された。原告は、市内にある無人店アマゾン・ゴーの2店舗が、法の施行開始から今月13日まで開示義務を怠り同法に違反したとした。これに対して、アマゾン社は「顔認証技術」を使用していないと反論。入店時に、非接触型の手のひら認証をオプションとして用意しているが、入会手続きの際に適切な情報開示がなされているとし、訴えは誤りだと主張している。

マジソン・スクエア・ガーデンでは昨年、係争中の相手方の企業の弁護を務める法律事務所の弁護士60人の施設への立ち入りを禁止したが、実行に際して顔認証システムを使用していることが発覚した。州司法長官は今年に入り、施設を管理・運営するMSGエンターテイメントに対して、立ち入り禁止および顔認証技術の使用は、差別禁止法に違反する可能性があると警告し、法遵守の取り組みを提出するよう求めた。