NY市 ホームレス自立支援プログラムに他州から非難

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ハワイ州のJohn Mizuno下院議員は31日、「ニューヨーク市のホームレスの市民を他州に送る政策」に違法性があるとして、ウィリアム・バー司法長官に宛てた書簡で調査を求めた。

Mizuno議員が問題視するのはニューヨーク市が2017年から開始した「Special One-Time Assistance Program(SOTA)」と呼ばれるホームレスの自立支援プログラム。プログラムでは、一定の条件を満たす家族や個人に対し、シェルターを離れ、市内およびニューヨーク州、他州で生活するために一年分の家賃を提供している。市ホームページによると、サービスを受けるには、90日間以上市のシェルターに入っていることや家計所得が家賃の2倍を超えていないことを条件としている。

ニューヨークポスト紙によると、これまで市が負担した家賃は8,900万ドル(約97億円)で、5,074家族、12,482人がプログラムによる支援を受けている。移動先は全米の373都市、ハワイを含む32州とプエルトリコにまたがる。さらに、市は旅費や家具などのコストも負担しているという。

Mizuno議員は書簡で、プログラムは「移転させられたホームレスの個人または家族が必要とする安全性と福祉、継続的な支援」を提供していないと述べ、SOTAは「ニューヨークから運び出されたホームレスに災難と非人道的な状況を生み出している」と主張。「ハワイの住人の多くが、この違法プログラムが、ハワイのすでに酷い状況を悪化させる可能性があると深刻な懸念を抱いている」と述べた。

プログラムに反対しているのはハワイだけではない。これまで278家族が移転したニュージャージー州アービントンのTony Vauss市長は、「ニューヨーク市のコミュニケーション不足とプログムに対する監督の欠如に非常に困惑している」とニューヨークポスト紙の取材に述べ、「SOTAの資金提供が終了すると、受給者は自身を維持するためにわれわれの州と地域のリソースを使用することになる」と批判。またジョージア州ウィラコーチーやユタ州ハリスビルの市長は、プログラムの存在自体に驚いた反応を示した。1,198家族の行き先となったニュージャージー州ニューアークでは、ニューヨークにSOTA受給者を送ることを禁止する条例を採決する手続きを進めているという。

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ニューヨーク市ホームレスサービス局は、同紙に対して、224家族が市のシェルターに戻ったと述べたが、結果的に市外のシェルターに住むことになった家族については、回答を控えている。一方、一家族あたりのシェルターの年間費用41,000ドルに対し、SOTAによる家賃負担は17,563ドルだとし、 財政面の負担軽減になっている主張している。

ホームレス支援団体「Coalition for the Homeless」によると、今年8月時点のニューヨーク市のホームレス人口は、21,802人の子供と14,806家族を含む、61,674人。1930年代の大恐慌以来もっとも高い水準に到達しているという。