ニューヨーク市 キャッシュレス店を禁止へ

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ニューヨーク市議会では23日、小売店や飲食店が現金による支払いを拒否することを禁じる法案が通過した。

法案は43-3の圧倒的多数で可決された。成立にはビル・デブラシオ市長の署名が必要となるが、市長は支持しているという。法案は市長の署名から9ヶ月後に施行される。

法案は、現金の受付拒否のほか、キャッシュレスの場合に比べて現金支払いの客に多く請求することを禁じている。初めて違反した場合の罰金は1,000ドル(約11万円)で、2回目以降は最大で1,500ドル(約16.5万円)の罰金が科される。

一方、小規模のビジネスに配慮し、20ドル紙幣を超える紙幣については受付をしなくてもよいとされた。またネットや電話、郵便による取引は例外となる。

プリペイドカードに現金をチャージする機器がある店舗は、現金を受け付けているものとみなされる。しかし、カード代金や最小残高として1ドル以上を要求してはならない。またカードに有効期限を設定してはならず、機器が故障している場合は、現金を受け付けなければならない。

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法案は2018年にブロンクス区選出のリッチー・トレス議員(民主党)が提出したもので、23人が共同提案者に加わった。

採決を前にトレス議員は会見を行い、キャッシュレス店の増加が「低所得のコミュニティー、とりわけクレジットやデビットを持つことのできない有色人種のコミュニティーに差別的な効果をもたらす」と規制の必要性を説明。加えて、高齢者のほか、個人情報保護の観点から現金支払いを好む市民もいるとし、「理由を問わず、消費者が支払い方法を選択する力を持つべきだ」と述べた。

ニューヨーク市の昨年の発表によると、11%の世帯(354,100世帯)が銀行口座を持たず(unbanked)、21.8%の世帯(689,000)は、口座を持っていてもチェックキャッシングやペイデイローンなど銀行以外の金融サービスを利用している(underbanked)。なかでもブロンクスは市内の他の地域よりも割合が高く、unbankedが1.7倍、underbankedが1.4倍となっている。なお、全国水準は6.5%(unbanked)、20%(underbanked)。

キャッシュレス店を禁じる動きは他州でも広がっている。昨年3月、ペンシルベニア州のフィラデルフィア市で法案が成立し、キャッシュレス禁止を実行する初めての市が誕生。さらに同月、ニュージャージー州でも州レベルで禁じる法案が成立した。8月にはサンフランシスコがキャッシュレス禁止の都市に加わった。このほか、ワシントンD.Cを含む複数都市で同様の法案が検討されている。