ドナルド・トランプ大統領の姪で臨床心理士のメアリー・トランプ氏が、叔父が憲法の規定を超えて政権に居座ろうとする可能性があると警鐘を鳴らしている。
アメリカ合衆国憲法修正第22条は、大統領職の3選を禁じている。だがトランプ氏は過去に、「人々は3期目を望んでいる」と繰り返し主張し、3月のNBCインタビューではその実現の可能性を否定せず、「方法はある」とも語っていた。
一方で、4月のタイム誌の取材では一転して、「3期目の法の抜け道を信じていないし、使うつもりもない」と述べ、発言に矛盾が見られる。
こうした発言に対し、24日配信のTelegraphのポッドキャスト番組に出演したメアリー氏は、問題はトランプ氏が3期目に出馬するかではなく、政権を手放すかどうかだと指摘。「ドナルドが権力を手放す姿を想像するのは難しい」と述べ、「”私は終身大統領だ。どこにも行かない”と言い張る可能性もある。自分を追い出す人々に挑戦するだろう」と語った。
トランプ氏の司法に対する態度は「やれるものならやってみろ」だと述べ、「選挙に負けたのに大統領執務室に居座る人物を強制的に引きずり出す執行手段はあるのか?どうやって彼を排除するのか?私たちには分からない。なぜなら、これまでそんな問題は起きたことがないからだ。私は、彼はその状況に挑戦するつもりだと思う」と語った。
少女相手に全力キャッチボール、叔父の異常な精神性
メアリー氏は、叔父トランプ氏の政治的な思想よりも、精神構造にこそ注目すべきだと主張する。
「この男にはイデオロギーがない。本能的な生き物で、必要なものや欲しいものを手に入れるために行動する」と指摘。「彼を駆り立てるものは何か、なぜなのか。彼の心理的な性質を理解することが重要だ。それが彼とどう向き合うべきかを考える方法だからだ」と語った。
臨床心理士としての見立てでは、もし本人が検査を受けるなら「反社会性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害の診断が出る可能性が高い」とする。こうした問題を抱えた人物は「基本的には、ルールを破ることに抵抗を感じない人々」で、「最も極端なところに行き着くと、それはサイコパシーやソシオパシーといったものになる」という。
その背景には、父フレッド・トランプ氏の影響があるという。メアリー氏によれば、フレッド氏は「ソシオパス」であり、「権威主義的で家父長的」で、自分の「不動産帝国」にしか興味がなかった。家庭環境は「女性蔑視的」だった。
こうした環境で父の期待に応えようと育ったトランプ氏は、今も昔も変わらない。メアリー氏は、6歳の頃に当時20代半ばのトランプ氏とキャッチボールをした思い出に言及。「全力でボールを投げてくるんですよ。手の骨がすべて折れるのではないかと思ったことがある」と振り返り、「彼はそうでなくてはならなかったし、勝たなくてはならならない。誰よりも優れていなければならならない。ずっとそういう人だった」と加えた。
「私が知る限り、彼は私が関わった中で唯一進化しない人だ。彼は絶対に変わらない。それに彼はどんな状況でも同じだ。これは大人なら警戒すべきことでもある。親しい人と過ごす時と群衆の前で人は変わるべきだが、彼はそうではない」。
弱点は「虚構の自己イメージ」
「彼の不安、精神病理、無意識のプロセスを理解するならば、彼に対する向き合い方が分かる」と主張するメアリー氏の分析によれば、トランプ氏は「正体が暴かれること」を最も恐れている。「公のイメージがすべて神話に基づいていること、実際にはそれとかけ離れていること」を人々が理解するのを恐れ、それがプレッシャーをかけるべき「弱点」だと指摘する。
「自分の精神を守るため、非常にもろい自尊心を保つために、”自分は最高で、最も優れている”というイメージを投影しなければならない」と述べ、さらに、常に誇張した発言をするのは、他者を説得するのと同じくらいに「自分自身を納得させようとしている」からであるとも主張。「彼自身もそれを信じていないことを理解している。こうした点も同様に攻撃するのだ」と述べた。
トランプ氏に対抗する「最良の武器は、嘲笑とあらゆる弱点を暴くことだ」と語り、「そうしなければ、これまで何十年もの間、何の罰を受けずにしてきたように、これからも逃げおおせ続けるだろう」と加えた。