火曜日, 9月 15, 2026

イランが捕獲したAnduril製無人潜水艇──米軍が進める「消耗可能な自律システム」

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drone submarine image
Image generated with Adobe Firefly

Anduril Industriesのパルマー・ラッキー創業者は9月9日、Xへの投稿で、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡入口付近で捕獲した無人潜水艇が、自社製のDive-LDであることを認めた。

イラン側は9月8日、米国の無人潜水艇を拿捕したと発表し、国営メディアを通じて機体の映像や画像を公開した。革命防衛隊は、捕獲した機体を「最新鋭の無人潜水艇」と説明している。

一方、米中央軍(CENTCOM)は、捕獲された機体は旧型モデルで、24時間以上前から故障して海上で動けない状態にあったと説明している。機体は地域の海域を調査し、継続中の作戦を支援していたが、機密情報や機密性の高いソナーなどは搭載していなかったという。

これに対しラッキー氏は、Dive-LDが数か月にわたりCENTCOMの管轄地域で活動し、米軍の支援任務で数千時間の稼働実績を上げていたと説明した。 同氏はDive-LDを、人間にとって危険すぎる環境での運用を前提に設計された「量産型の消耗可能な潜水艇」と表現している。具体的な任務内容は明らかにしなかったものの、捕獲されるまでの期間に重要な役割を果たしたと強調した。

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今回の事件は、シリコンバレー発の防衛テック企業を代表するAndurilの無人システムが実際の米軍作戦を支援していることを示すとともに、米国防総省が進めてきた自律型装備の大量配備構想にも改めて注目を集めている。

Dive-LDとは何か

Dive-LDは、2018年設立のDive Technologiesが開発した大型の自律型無人潜水艇(AUV)だ。Andurilは2022年にDive Technologiesを買収し、その技術と製品を自社の水中システム事業に取り込んだ。

Dive-LDは全長約5.8メートル、直径約1.2メートルで、最大6,000メートルまで潜航できる。最大10日間の連続行動が可能とされ、任務に応じてセンサーや機材を交換できるモジュール式ペイロードを採用している。 想定される任務は、情報収集・監視・偵察(ISR)、海底地形の調査、機雷の捜索・除去、海底インフラの監視などだ。海峡や港湾、海底ケーブル、パイプラインなど、人員を投入するには危険な場所で長時間活動することを想定している。

Dive-LDは、単一の任務に特化した潜水艇ではない。複数のセンサーや機材を搭載できる無人の水中プラットフォームとして設計されている。 一部報道では、価格は1機当たり約250万ドルとされる。ただし、実際の調達単価は、搭載するセンサーや支援装備、整備・訓練、契約条件などによって変動する可能性がある。

重要なのは、こうした機体を「高価で少数の特殊装備」としてではなく、一定の損失を許容しながら大量に運用することを想定している点だ。

米軍は実際に使っていた

Dive-LDの初号機が米海軍に納入されたのは2025年4月だ。自律型システムを大量配備する国防総省の「レプリケーター(Replicator)」イニシアチブの一環として、ワシントン州キーポートに拠点を置く米海軍のUnmanned Undersea Vehicle Squadron 1(UUVRON-1)に引き渡された。 UUVRON-1は、無人システムを用いた海中任務の運用や開発を担う部隊だ。

なお、米海軍が現在Dive-LDを何機保有しているかは明らかになっていない。

Andurilは2024年、ロードアイランド州クオンセット・ポイントに大型AUV生産施設を建設すると発表した。同施設では、Dive-LDの生産能力を年間200隻以上に引き上げることを目指している。 ただし、年間200隻という数字はあくまで生産能力の目標であり、米軍などから実際に発注された台数を示すものではない。

今回の拿捕によって公になったのは、Dive-LDが米軍の作戦支援に投入されていたということだ。もっとも、捕獲された機体が具体的にどのような任務を行っていたかは明らかになっていない。

一方、米軍がホルムズ海峡周辺で水中監視や機雷対策を強化していたことは確認されている。CENTCOMは4月、ミサイル駆逐艦2隻がホルムズ海峡で機雷除去活動に従事し、近く水中ドローンを含む追加戦力が加わる予定だと発表していた。 また、Financial Timesは、過去4か月にわたり米軍の特殊部隊が機雷除去任務を実施していたと報じている。海軍特殊部隊(SEALs)のダイバーが夜間を中心に、無人艇、ロボット、特殊な水中機材と連携して活動していたという。

こうした情報から、捕獲されたDive-LDが機雷対策や海底調査に関与していた可能性はある。ただし、公開情報だけで任務内容を断定することはできない。

「大量・自律化」を目指したレプリケーター

レプリケーター構想は、2023年8月28日に当時のロイド・オースティン国防長官の指揮下で発表された、国防総省の無人システム導入構想だ。当初は、2025年8月までに数千機規模の無人システムを配備する目標が示された。 背景にあるのは、高価で少数の有人プラットフォームだけに依存するのではなく、比較的安価な無人システムを大量に配備するという考え方だ。 こうした装備には、損失を一定程度許容できる「attritable」という考え方が取り入れられている。日本語では「消耗可能」や「損失許容型」などと表現される。

敵の監視能力や防空能力を数の力で圧迫する。レプリケーターは、こうした戦い方に対応するため、無人システムを迅速に選定し、試験し、量産へ移行させる枠組みとして構想された。

Dive-LDは、この考え方を水中領域に持ち込むシステムの一つだ。 米議会調査局(CRS)の資料では、AndurilのAltius-600およびGhost-X、AeroVironmentのSwitchblade 600、Performance Drone WorksのC-100、Fortem TechnologiesのDroneHunter F700などとともに、レプリケーター構想に関連するシステムとして挙げられている。

ただし、構想が当初の計画通りに進んだかについては議論がある。当初は数千機規模の配備が目標とされたものの、2025年8月までに実際に配備された数は数百機にとどまったとの指摘もある。 また、2024年9月に発表された第2弾では、小型無人航空機システム(sUAS)への対処、すなわちC-sUASに重点が置かれた。

拡大するAndurilの政府契約

こうした米軍の調達方針の変化を背景に、Andurilの政府契約も拡大している。 USAspendingのデータによれば、米政府によるAndurilへの発注額(obligations)は、2022会計年度の約2億1,600万ドルから、2026会計年度には約8億7,000万ドルまで増加した。発注元は国土安全保障省が51.3%、国防総省が44.2%を占めるとされる。 ただし、政府契約の「obligations」には、契約上の将来支出を含む場合がある。そのため、この金額が契約締結時点でそのまま売上高として計上されるわけではない。

直近では、米陸軍の次世代戦術情報システム「TITAN」が試作段階から量産段階へ移行し、PalantirとAndurilに総額1億9,200万ドルの契約が付与された。Andurilの受注額は6,500万ドルだった。

米国以外の同盟国でも現地開発・現地生産を進めている。

オーストラリアでは、現地法人Anduril Australiaを設立し、超大型自律型無人潜水艇(XLUUV)Ghost Sharkを開発・生産している。同社は設立から4年足らずで試作から量産・納入へ移行し、オーストラリア政府と17億豪ドルの契約を締結した。現地雇用は約300人に達し、初号機は2026年1月にオーストラリア海軍へ引き渡された。

Japan Timesによると、AndurilのChristian Brose社長兼最高戦略責任者は、この現地開発・生産モデルを日本にも適用できると説明している。同社は2025年12月に東京オフィスを開設し、現地での工場建設、雇用創出、サプライチェーン構築を提案している。

ただし、日本政府は現時点でAnduril製品の調達を決定していない。日産自動車の追浜工場取得を協議中との報道もあるが、合意には至っていない。

Andurilは、日本向けの候補として、無人航空機のFury、Ghost Shark、徘徊型弾薬のAltius、低コスト巡航ミサイルのBarracudaなどを挙げている。今後の防衛3文書の改定や無人システム関連の調達方針が、日本での事業展開を左右することになりそうだ。

大型化する資金調達

資金調達でもAndurilは大型案件を続けている。 同社は2026年5月、50億ドルを調達し、評価額は610億ドルに達したと発表した。2025年の売上高は約22億ドルとされている。 単純計算すると、610億ドルの評価額は2025年売上高の約28倍に相当する。

Andurilに集まっている資本が評価しているのは、現在の売上だけではない。無人システムの大量生産を進め、米軍および同盟国の調達構造が変化する中で、事業を拡大できるかどうかが企業価値の大きな要素になっている。

7月には、約1,000億ドルの評価額で追加調達を行う可能性も報じられた。ただし、これは交渉段階の情報であり、調達の成立や評価額は確定していない。 仮にこの評価額が実現すれば、報道時点の株式時価総額を基準にした場合、ノースロップ・グラマンを上回り、ロッキード・マーティンに近い規模になる可能性がある。 もっとも、非上場企業の資金調達時評価額と、上場企業の市場時価総額は算定方法が異なるため、単純な比較には注意が必要だ。

同社が手掛けるのはDive-LDだけではない。無人航空機、対ドローンシステム、迎撃システム、戦場向けの指揮統制ソフトウェアなど、複数の領域で製品を展開している。

イランによる拿捕は、Andurilにとって望ましい出来事ではない。米側は、機体が旧型で、機密情報や機密性の高いソナーを搭載していなかったと説明しているが、専門家からは、イランが機体の機械系統を解析し、リバースエンジニアリングに利用する可能性を指摘する声も出ている。

その一方で、Luckey氏が強調したのは、Dive-LDが捕獲されるまでの数か月間、米軍の支援任務で数千時間にわたって稼働していたという実績だった。

今回の一件は、無人システムの運用には故障や捕獲のリスクが伴うことを示した。同時に、レプリケーター構想に代表される自律型・損失許容型システムが、構想や試験の段階にとどまらず、実際の作戦を支援する段階に入っていることの一端も浮き彫りにしている。