キャシー・ウッド率いるARK Investは9月9日、ARK Innovation ETF(ARKK)とARK Next Generation Internet ETF(ARKW)でMeta Platforms(Meta)株を計43,091株買い増す一方、Alphabet(Googleの親会社)株を計84,392株売却した。 ARKの公表データによると、Meta株の買い増しはARKKで38,304株、ARKWで4,787株。Alphabet株の売却はARKKで72,803株、ARKWで11,589株だった。市場価格に基づく推計では、Meta株の買い増しは約2,790万ドル、Alphabet株の売却は約2,780万ドルに相当する。
ARK Investは売買理由を公表していない。ただ、取引の前後には、Metaによる個人向けAIエージェントの発表や、AIスタートアップの買収報道が相次いでいた。
MetaのAIエージェント戦略
9月8日、Metaは個人向けAIエージェント「Muse」を発表した。 Museは、ユーザーの目的を理解し、旅行予約やメール送信、フォーム入力、決済など、複数段階の作業を自律的に進めるサービスだ。米国ではiOS、Android、専用ウェブサイトなどを通じて提供され、無料版に加えて月額20ドルと100ドルの有料プランが用意される。 Museは、Metaが開発するモデル「Muse Spark」を基盤としている。Metaは、専門的な知識がなくても使えることや、将来的に大規模な利用者基盤へ展開できることを強調している。 MetaにとってMuseは、AIを既存サービスに組み込むだけでなく、AIそのものを新たな収益源にできるかを試すサービスだ。サブスクリプションを通じた消費者向けAIの直接収益化という点でも注目される。
Stilla.aiの買収
9月9日には、MetaによるスウェーデンのAIスタートアップStilla.ai買収も報じられた。 取引完了後、Stilla.aiのチームと技術をMetaに移管し、WhatsApp、Instagram、Messenger上で企業の顧客対応や取引を支援する「Meta Business Agent」の開発に生かす計画とされている。 Meta Business Agentは、企業と顧客のやり取りを自動化し、商品案内、問い合わせ対応、取引手続きなどを支援する構想だ。 Museが個人向けのAIエージェントだとすれば、Meta Business Agentは企業向けのAIエージェントにあたる。Metaは、個人のタスク処理と企業の顧客対応という両面から、AIエージェントをWhatsApp、Instagram、Messengerなどの巨大なユーザー基盤に組み込もうとしている。 ただし、Stilla.ai買収の金額や具体的な統合時期は公表されていない。
訴訟リスクは残る
Metaには、AI以外にも大きな材料がある。 8月26日、Metaは若年層のSNS利用をめぐる複数州との訴訟で、最大約170億ドルを支払う和解案に合意したと報じられた。和解案には、FacebookやInstagramにおける子供向け安全対策の強化も含まれる。
この和解によって、一部の大型訴訟をめぐる不確実性が低下する可能性はある。一方、今回の和解ですべての法的リスクが解消したわけではない。Metaは7月29日に発表した第2四半期決算で、若年層関連の訴訟や規制問題が今後の業績に重大な損失を及ぼす可能性があると説明している。巨額の支払いに加え、今後の規制対応や別の訴訟が財務負担になる可能性も残っている。
市場の反応
9月11日終値時点で、Meta株は648.03ドル、時価総額は約1.65兆ドルだった。5営業日では5.07%、3カ月では14.00%上昇した一方、年初来では1.83%下落している。 Meta株は短期的には反発しているものの、年初来ではS&P500に出遅れている。決算発表後のAI投資負担への懸念が残る一方、Museの発表やStilla.ai買収を受けて、AI関連事業の拡大に対する関心も高まっている。
第2四半期決算
Metaは7月29日、2026年第2四半期決算を発表した。売上高は608.01億ドルで、前年同期比28%増となった。市場予想の602.1億ドルも上回ったとされる。 広告関連指標も堅調だった。Family daily active people(DAP)は2026年6月平均で36億人となり、前年同期比3%増。広告表示回数は14%増、平均広告単価は12%増だった。
一方、費用・経費は420.26億ドルと55%増加した。このうち24.0億ドルは訴訟関連費用、11.8億ドルは2026年5月の人員削減に伴う退職関連費用だった。 営業利益は187.75億ドルと8%減少し、営業利益率は前年同期の43%から31%へ低下した。純利益は158.48億ドル、希薄化後EPSは6.18ドルとなり、いずれも前年同期を下回った。
AI投資とキャッシュフロー
第2四半期の設備投資は、ファイナンスリースの元本返済を含めて310.8億ドルに達した。 営業活動によるキャッシュフローは318.6億ドルだったが、フリーキャッシュフローは7.84億ドルにとどまった。前年同期の85.5億ドルから大幅に減少しており、広告事業が高い成長を続ける一方で、AIデータセンターや計算インフラへの投資がキャッシュ創出額の大部分を吸収している。
6月末時点の現金・現金同等物・市場性有価証券は902.6億ドルだった。長期債務は836.6億ドルで、2025年末の587.4億ドルから増加している。 Metaは2026年5月、合計250億ドルの固定利付シニア無担保債を発行している。AIインフラへの投資拡大にあたり、営業キャッシュフローだけでなく、外部資金も活用している。
通期見通し
Metaは第3四半期の売上高を610億~640億ドルと予想している。 2026年通期の費用・経費見通しは1,650億~1,690億ドルで、Q2に認識した24億ドルの訴訟関連費用を反映するため、下限が引き上げられた。 2026年の設備投資見通しは、ファイナンスリースの元本返済を含めて1,300億~1,450億ドル。Metaは、2026年通期の営業利益が2025年を上回ると説明している。
ARKのその他の主な動き
ARKKとARK Genomic Revolution ETF(ARKG)では、遺伝子編集関連企業のIntellia Therapeutics(NTLA)が4営業日連続で買い増しされた。週の中で最も一貫した動きであり、4日間に買い付けた合計は506,105株に達した。
一方、Twist Bioscience(TWST)は9月8日と11日に、10x Genomics(TXG)も9月8日と11日に、それぞれ売却された。週初と週末にはゲノム解析・研究用ツール関連銘柄の売却が確認された一方、遺伝子編集企業のIntelliaは4営業日連続で買い増された。
Brera Holdings(SLMT)は、ARKK、ARKW、ARKFで9月8日、10日、11日に少量ずつ売却された。9月8日から11日までの売却は合計20,640株だった。
今週のARKの売買では、Meta買い・Alphabet売りが最大の動きとなった。AIエージェントを新たな収益源にしようとするMetaの動きと、巨額のAI投資による負担が同時に進むなか、ARKがどちらを評価したのかは今後の売買でも注目される。






