小説「風と共に去りぬ」に有害認定?出版社が警告表示

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米南北戦争時代を舞台に白人上流階級の女性の半生を描いたマーガレット・ミッチェルの名著「風と共に去りぬ」の新版に、読者を傷つける、有害な内容があると警告が加えられることになった。

「風と共に去りぬ」は奴隷制度が残っていた1860年代の南部ジョージア州を舞台に、白人の農園経営者の娘として生まれたスカーレット・オハラを主人公にした物語で、初版は1936年に刊行された。

英紙テレグラフによると、英国の大手出版社「パン・マクミラン」は、自社の新版では原文のままとする一方で、トリガー警告と、作品は「白人至上主義を美化」していると論じる小説家の前書きを加えることを決定した。

トリガー警告には「この物語は、容認できない慣習の表現や、人種差別的で偏見に満ちた描写、問題のあるテーマ、特色、言語、イメージを含みます。読者の皆様には傷つける、実際に有害な語句や用語があることを警告しますが、これらは執筆当時には日常的に使われ、歴史的文脈における真実を反映するものです」と記されるほか、「テキストを変更することは原作の信頼性を損なうと考え、そのまま残すことを選択しました。しかし、これは、使用されているキャラクター設定、内容、言語を支持するものではありません」とことわりが加えられる。

前書きを執筆した英歴史小説家のフィリッパ・グレゴリー氏は、その中で、同物語は、自由のために戦う南部連合という失われた大義を支持することを意図した小説であり、「南部の歴史における人種差別的な農園主の観点を効果的に促進している」と主張。さらに、小説は「アフリカ人は白人と同じ種族ではないと明確に伝えている」と指摘し、「これが小説を台無しにしている虚偽である」と論じているという。また「人種差別を擁護」し「白人至上主義を美化し、説いている」としつつ、作者は「作品のこの側面を歪めて描いている」とも批評しているという。

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「風と共に去りぬ」は1939年に映画化。主人公スカーレット・オハラをビビアン・リー、夫のレット・バトラーをクラーク・ゲーブルが演じ、小説・映画ともに現在に至るまで不朽の名作とされている。物語は南北戦争下で時代に翻弄される気丈な女性スカーレットとバトラーとの恋愛が中心である一方、背景にある南部の農園の暮らしぶりが奴隷制度を擁護するような描写だとして、これまでもたびたび批判の的になっていた。

ニューヨークポスト紙によると、先月、映画のオリジナル脚本が初めて公表され、当時撮影中にスタッフ間で人種差別的なシーンの扱いをめぐる議論がなされていたことが明らかになった。オリジナル脚本にはスカーレットが黒人のメイドや奴隷たちを暴力で脅し、別の奴隷を二度と家族に会えないよう売り飛ばすといったシーンがあったが、映画ではカットされた。